486回目 本格的な隣国との戦争
前回の戦争から10年も過ぎようとした頃。
隣国は国力を回復。
侵攻の準備に入っていた。
とはいえ、直接的な軍勢の越境はない。
兵力の差は隣国も理解している。
下手に攻撃を仕掛ければ前回の二の舞になる。
それが分かってるから、国境でのにらみ合いでとどまっていた。
なのだが、それで全てが終わるわけもない。
隣国はなんとかして攻略出来ないかと、様々な手段を講じた。
その手段として、小数の部隊による破壊工作を実施していった。
数人から十数人の部隊を秘密裏に投入。
それによる様々な破壊工作の実施。
ヒライワツミ王国各地にくすぶる不満をあおっての暴動。
様々な情報網の構築。
要職にある者の懐柔。
ありとあらゆる裏工作が行われていった。
直接戦う事は出来ない。
ならば、内部に浸透して国力を停滞させる。
白刃や銃火を交えぬ戦争は、とっくに開戦状態だった。
これはトモルも把握していた。
なので、対応策をタカヤスを通じて国王らに進言していた。
通常とは異なる戦争が始まってると。
これを受けて王国も対応を実施していく。
まず国内の引き締め。
不穏分子の排除。
これらを徹底していく。
内戦は終わり、藤園家は消滅した。
諸悪の根源たるこの一族が消えて、王国内の問題は大幅になくなった。
とはいえ、その残党は残ってる。
また、藤園の恩顧を受けた者も多少は存在する。
国をほしいままにしてきた藤園家。
その悪行は数え切れないほどである。
だが、誰に対しても非道を働いたというわけでもない。
基盤や土台となる者達にはそれなりの厚遇もしている。
その為、藤園家の領地などにおける藤園への評価は高い。
税率は低く、無茶な徴用・摘発などもない。
だから藤園の領地にいる一般人は藤園に敬意を抱いている。
彼らからすれば、良き統治者であったのが藤園家だ。
もっともそれは、他の貴族や民衆に無理を強いていたからである。
様々な労働や負担。
本来藤園が負うべきだった物事。
それらの全てを他に押しつけた。
その結果として、藤園の領民は穏やかな日々を送っていた。
藤園の領民にとってはありがたい事だっただろう。
だが、他の貴族や他領の領民はたまったものではない。
この為、藤園を慕う者達、藤園の領民への怒りや圧力は大きい。
今までの分を取り戻すかのように、過酷な役目が押しつけられている。
困った事に、これが不満の種になっている。
事情を考えればやむをえないが、藤園の領民達からすればたまったものではない。
理由を棚上げにして、「なんで俺たちが」「どうして私たちが」という気持ちになる。
そしてそこに隣国などはつけいっていく。
ならば、この状況を突き崩してみないかと。
こうして藤園の領民だった者達は敵側についていった。
ヒライワツミ王国における破壊活動の温床として機能する。
それらをまずは排除する事となった。
もとより、藤園の残滓は残しておけない。
国を揺るがすならなおさらだ。
王国は治安部隊を投入。
藤園の領民と、そこに繋がってる隣国の工作員を捕らえていく。
場合によっては殲滅もしていく。
逮捕して情報を聞き出す事は、ある程度諦めている。
生かして捕らえるのは難しい。
また、逮捕を優先して取り逃がしたら元も子もない。
よって、敵は一気に殲滅。
逮捕できれば儲けものという事になった。
どのみち隣国が絡んでるのは間違いない。
その隣国を滅亡させれば良いのだ。
口実は既にある。
無理して逮捕して、情報を吐き出させる必要は無い。
だいたいだ。
工作員や諜報員。
スパイといった者達が簡単に情報を吐き出すわけがない。
そんな事に時間を費やすくらいなら、さっさと潰した方が良い。
どうしても情報が欲しいなら。
魔術で洗脳すれば良いだけだ。
その為の魔術師もそろってる。
高レベルに引き上げた魔術師には事欠かない。
相変わらずモンスターの巣を使っての人材育成は続いている。
こうしてヒライワツミ王国内における秘密活動が潰れていく。
隣国はせっかく構築した潜入工作機関を失っていく事になる。




