48回目 管理してる連中も同罪である 2
舎監達は広間に到着してから、更にトモルからの攻撃を受けていった。
理由を告げられる事も何もなく、ただひたすら殴り飛ばされていった。
それは暴虐の嵐だった。
この時点でのトモルの力は常人を超える。
走れば100メートルを4秒以下、3秒台で簡単に走り抜ける事が出来る。
重量物も700キロや800キロなら確実に持ち上げられる。
野球ボールを投げれば、時速300キロから500キロは出るだろう。
そんな力で叩きのめされていくのだ。
まともな人間が耐えられるわけがない。
対抗出来るわけがない。
ただひたすら、されるがままに蹂躙されていくしかない。
死にそうな程の苦痛を受け、本当に死ぬまで攻撃を受ける。
そして治療魔術で回復させられる。
回復して更に痛めつけられる。
そうした地獄を味わっていき。
ある程度のところでそれが止まる。
終わった、と舎監達は安堵をおぼえた。
だが、本番はここからである。
トモルの尋問が始まるのだ。
「それでお前ら、なんでこんなの黙認していた?」
尋ねられた舎監達は何のことだか分からず困惑した。
そんな彼等の横っ面をトモルは平手打ちして説明を加える。
「なんで俺達が上級生に集められてるのを黙って見てた?
聞いてんのはこれだ。
そんな事も分からねえのか」
苛立つトモルは更に拳で横っ面を殴った。
吹き飛ばされた舎監達が壁に叩きつけられていく。
「さっさとこっちまで戻ってこい。
殺すぞ」
吹き飛ばされた舎監達に命令が飛ぶ。
返事こそ出来なかったが、舎監達はそれに従った。
痛む体を無理矢理動かしてトモルの所に戻る。
そうしなければ、もっと酷い事になると察して。
「それで、俺達がこんな目にあってるのを何で黙って見てた?」
「……それは」
「おう」
「以前から、そうしてきてたから……」
「ふざけんな」
トモルは再び舎監達を殴りつけた。
今度は壁まで吹き飛ばさない。
そうすると戻ってくるまで時間がかかるからだ。
なので、今度は床にたたきつけた。
足首をもって、上に振り上げて、一気に床に打ち下ろす。
された者達は床に激突する瞬間、体内の空気が全て抜けていくような感覚にみまわれる。
瞬間的な呼吸困難におそわれ、体が意志に従って動く事が出来なくなる。
そんな舎監達にトモルは教え諭していく。
「そういうバカを止めるのがお前らの仕事だろうが。
サボってんじゃねえ。
職務怠慢だ」
当たり前の事を短く告げる。
舎監は馬鹿げた事を止めるのも仕事だ。
それをしないのであれば役目を果たしてないという事になる。
だが、舎監達がそうした理由もある程度は理解出来る。
(この中に偉い奴がいるなら、従うしかないんだろうけど)
有力者の子供がいるなら、その意向を無視するわけにはいかないだろう。
その為にこんな事を放置せざるえなかった、黙認するしかなかったのかもしれない。
だとすれば舎監達は、やってる事は許せないとはいえ被害者であるとも言える。
それは舎監達だけの問題ではなく、そんな事を放置してる有力者に最大に問題がある。
ただ、こうした事は恒例行事のようになってる。
今年初めてとか、去年が最初というわけでもない。
何年も続いてきた馬鹿げた戯れ事であるならば、学校も認めてるのだろう。
大っぴらでなくても。
もう酌量の余地がない。
何より、舎監達もこれを何も問題と思ってないようである。
ならば、これはもう共犯と言ってよい。
それを許すつもりはトモルにはなかった。




