467回目 勝者は勝者の悩みがある 2
幸いにもタカヤスは勢力を拡大している。
倒せるところから藤園家の勢力を潰していっている。
おかげでタカヤスの領地であるイツキヤマ近辺は大分落ち着いた。
藤園家に代わって統治を始めた王族や旧氏族も機能している。
相変わらず人材不足ではあるが、それでもなんとか現状維持を続けている。
そうして国内の何州かは平穏を取り戻していった。
人々の生活と、それに連なる経済の立て直しも進んでる。
そんな安全を求めて難民も流れ込んでくる。
それらは頭の痛い問題だ。
だが、それも単純労働や侵攻用の兵士として取り込んでいく。
難民をいつまでも居着かせない。
彼らが元いた場所を彼らの手で取り戻させる。
そして、元の場所での生活をさせる。
そうやって難民も利用して藤園家を潰していく。
むしろ最近は、難民を誘って労働力や兵力にあてるくらいだ。
その方が色々と都合が良い。
なにせ、民衆が流出すればそれだけ生産力が落ちる。
経済規模が減ると言っても良い。
農民・商人・職人・労働者。
これらが消えれば産業は成り立たない。
産業によって発生する経済も消えていく。
それを狙って、相手の弱体化のために民衆を引き抜く。
引き抜いた者を使って攻め込む。
トモルやタカヤスの損失は一切ない。
敵を痩せ衰えさせて潰すことが出来る。
問題なのは、拡大する領地に人材が追いつかない事だ。
どれだけ育成しても、拡大の速度に追いつかない。
何より、王族の数が追いつかない。
統治者として王族を配置したいが、その数は限られてる。
ならばと旧氏族も用いるが、これもまた足りない。
やむなく、平民庶民から有望な者を抜擢していく。
それらを代官として派遣し、新領地の統治を任せていく。
そうした者達に求められたのは、有望さだ。
有能さではない。
能力があるだけの者は用いない。
誠実さや正直さのある有望な者を採用・登用していく。
そうしなければ、藤園の二の舞になる。
藤園は決して無能ではない。
むしろ有能と言える。
だが、心が伴ってない。
相手を思いやらない、いたわることがない。
有能ではあるが、その能力を自分の欲望達成だけに使う。
その為に悪事をいとわない。
むしろ、進んで悪事を行う。
そうした事にならないように、有能な者は避けた。
火種を自らまくような事は慎んだ。
出来れば能力のある者を使いたいとは思う。
しかし、後々の事を考えれば、それは悪手でしかない。
そうして選ばれた者達が各地に赴任していっている。
慣れない事もあって、失敗も多々ある。
それでも、問題の無い程度に統治を進めていく。
後にこれが、藤園消滅後の新たな統治体制の原型となっていく。




