452回目 原因の処分、藤園本家の終焉
水にのまれ、流されていく王都。
それを王城から強制的に見させられていく者達。
現国王、その王族。
そして、王城につめる貴族や武家達。
それらもまた呆然と流されていく王都を見つめていた。
「なぜ……」
長く続く沈黙。
その果てにようやく国王が口を開く。
「なぜここまでした。
なぜ、ここまでする必要がある!」
押し殺した、しかし強い口調だった。
それはすぐそこにいる原因たる人間に向かっていく。
「何がおかしいんだ?」
しれっとトモルは応える。
「お前らが馬鹿をやった。
その馬鹿の拠点だ。
壊して潰して壊滅させる。
そんなの当たり前だろ」
戦略として間違った事ではない。
相手の拠点となる場所を破壊する。
そうして二度と活動出来なくする。
「やって当たり前だ。
戦争なら当然だ。
何を問題視してるんだ?」
トモルとしては問われる事が理解出来ない。
王侯貴族ならば。
ましてそれが国の頂点を担う者達ならば。
こんな事考えて当然、当たり前の事である。
相手の拠点を破壊し、活動の全てを停止させる。
それを以て、自国への脅威を取り除く。
国土防衛や保全、安全保障を考えればそうするのは当然だ。
まして相手が脅威となるのであればだ。
可能な限り敵を殲滅していく。
そうでなければ、自分たちが侵略される。
そんな戦争において、敵国の首都を壊滅させるなど珍しくもない。
相手を生かしておくつもりが無いならなおの事。
だからトモルは国王らが言い出したことが理解出来なかった。
「お前らだってやっただろうが。
少なくとも、王国はかつて幾つかの国を滅ぼした。
それがここで起こった。
ただそれだけだ」
対象になってるものが違うだけ。
ただそれだけの事でしかない。
しかし、それは国王とその他大勢には通じなかったようだ。
口々に文句を言い始める。
それらが鬱陶しいので、
「黙れ」
と言って突風をぶつける。
殺傷力はないが、尻餅をつかせるには十分な威力だ。
生き残っていた国王と貴族・武家は吹き飛ばされる。
「何をする!」
文句が飛んできた。
そんな輩に、今度は水をぶっかけてやる。
魔術で作ったそれは、国王一同をずぶ濡れにした。
「なんなら、今度は炎をぶつけるぞ。
土の中に生き埋めでもいいけど」
そこまで聞いて、大半はそれで黙った。
しかし、全員が大人しくなったわけではない。
他の者が黙る中でも、態度を変えない者もやはりいる。
「貴様!」
でかい声を出してそいつは突っかかっていく。
「国王陛下に対してなんと────」
言い終わる前にそいつの頭は土で覆われた。
頭を覆った土は硬く、手で剥がす事は出来ない。
空気も通すことはない。
男はその状態でしばらくもがいていた。
だが、それも緩慢になり、その場に倒れていった。
しばらくは床の上で身じろぎをしていたが。
それも程なく止まった。
それから、汚物が身体から流れ出ていく。
死んで身体が弛緩し、体内の汚れが出てきたのだ。
「だから、余計なことを言うな」
冷淡にトモルは告げていく。
「王様だかなんだか知らんが、滅ぼした国にだって王様はいた。
それを殺してきたんだろ?
それのどこに礼儀やら何やらがあるんだ?」
どんな態度をとろうとも、相手を侵害して殺す事に変わりは無い。
また、そんな相手に敬意をとっていたのかどうか。
トモルの知る限りそんな事は無い。
「潰した国の王族なんて、全員殺してきただろうが」
やり方は様々だが、そうして来たのは確かだ。
断頭台で一気に殺したり。
磔にしたまま死ぬまで放置したり。
空気穴以外何もない牢獄に放り込んだり。
まあ、ろくでもない殺し方をしてきている。
「自分の番が来たからって、往生際が悪くないか?」
他人にしてきた事だ。
自分がやられる側になったからって、好待遇を求めるのはおかしな話だ。
何よりも、
「第一、なんで俺がお前らを厚遇しなくちゃならんのだ?」
それが一番の問題だった。




