438回目 王都にいる者たちは 6
モンスターの巣が減少した。
となれば、残ったモンスターの巣の取り合いになる。
そこを狩り場としている冒険者達によって。
彼らからすれば、食い扶持がかかってる。
無理を通してでも狩り場を確保する必要があった。
その狩り場を軍が独占していった。
これにより多くの冒険者が締め出しをくらった。
された方はたまったものではない。
そういった冒険者は、残ったモンスターの巣へと向かっていった。
あるいは、モンスター領域との接点である辺境に。
この一件によって、冒険者達の政府への不満が高まった。
政府からすれば致し方ない事ではあるのだが。
食い扶持を奪われた冒険者には関係がない。
幸い、辺境の方で受け入れられたので、食うに困る事はなかったが。
それでも問題を起こした政府への恨みは大きい。
翻って、受け入れてくれた辺境への好意が高まった。
もちろん、原因はトモルである。
トモルがあちこちのモンスターの巣を破壊した。
これが原因だ。
それも、冒険者を集めるための手段だったのだ。
それを知れば、冒険者の考えや感情も変わっただろう。
だが、それでも辺境の柊領までの移送はトモルの負担だったこと。
実際に辺境でのモンスター退治はかなり稼げた事。
受け入れ体制も、押し寄せる冒険者に間に合わずに万全ではなかったが。
それでも着々と状況をととのえていった事。
これらにより冒険者の感情は決して悪くはならなかった。
むしろ、居場所を確保しておいてくれた事で、総合的に好感度が勝っている。
また、辺境のさらに向こう側。
開拓されたモンスター領域では様々な仕事がある。
冒険者以外の道を見つけて職を変える事も出来た。
食い詰め者だった者達からすれば、それは様々な可能性に満ちた希望の場所でもある。
そこで新たな生き方を見つけた者も多い。
そんな者達にとって、トモルはよい領主だった。
悪逆非道さはあってもだ。
それを踏まえても、他よりはよいと受け止められている。
こんな事になっていたから、政府への反発心を持つ者は多い。
トモルの領地である柊領にいる者で、特に新参者はこの傾向が強い。
今回の兵力参集には直接関係はない。
だが、政府への反発はこういうところで大きくなっていた。
それはまた、様々な場面で現政権の不利となっていく。
とりあえず、即座に戦力になる冒険者の徴用は出来なくなった。
応じる者が減ったからだ。
その逆に、こうした冒険者が臨時の戦力としてトモル側についている。
最前線の戦闘には参加しないが、輸送の護衛などで活躍している。
もっとも、少数ではあるがゲリラ戦の要員として活動してる者もいる。
トモルの下でレベルを上げた高レベル冒険者達は、各地で猛威を振るっていた。
例えば、各地で起こってる反乱や暴動。
こういった蜂起の中心戦力として、こうした冒険者が参加している。
それが問題の解決を遅らせ、問題を長引かせていった。
モンスターの巣の破壊。
それによる影響は意外なほど大きくなっていた。
トモルとしては、そうなればいいなと思っていた程度だが。
実際にここまで大事になってくれて助かっている。
ともあれ、王都の藤園側は戦力の増強が難しくなり。
逆に敵であるトモル側の戦力増大という事態になっている。
それは彼らにとって決してよい話ではなかった。
知らず知らずのうちに、こうした状態になっている。
それを知らないが故に、対応も出来ない。
出来ないから余計に不利になっていく。
これは一例でしかないが。
藤園側は知らないところで様々な問題を積み上げていた。
その問題が形をともなって現実に発生している。
それが現在の騒乱である。
たとえこれが藤園側の勝利で終わっても。
後片付けはかなり難しくなるだろう。
その事にまだ気づいてないのは、ある意味幸福だろうか。
何も考えず、悩まずに済むのだから。
それしか利点はないのではあるけども。




