416回目 州都攻略 6
無情な命令だった。
トモル勢への突撃。
それがどれほどの犠牲を出すのか。
指示を出した将軍もそれが分からないわけではない。
しかし、だからといって距離をあけては意味が無い。
トモル勢が遠距離攻撃を仕掛けてるのは将軍にも分かった。
どうやってやってるのかまでは分からなかったが。
ならば、遠距離戦における対応をしていくしかない。
そもそもとして、撤退したとしてどうなるのか?
敵はそのまま残り、攻撃を加えられ続ける。
それは敵の攻撃からあきらかである。
砲撃については将軍も把握してるわけではない。
ただ、いきなりそこらから破裂・爆発が起こる。
それにより多大な損害が出ている。
それが魔術による長距離攻撃ではないかと将軍は考えていた。
いったいどうやってやってるのかは分からない。
だが、遠距離からの魔術による攻撃。
そうとしか言えないような現象が起こってる。
よって、迂闊に退却は出来なかった。
退けば、その攻撃をくらい続ける事になる。
また、敵の兵士の攻撃。
いったいどうやってるのか分からないが、離れた所から兵士を倒しているという。
ならば、おそらくは遠距離攻撃なのだろうとは思った。
そういった敵に背中を向けても意味が無い。
後ろから撃たれるだけだ。
ならばどうするか。
敵との距離をつめて、肉薄するしかない。
接近戦、格闘の距離も持ち込むしかない。
幸い…………と言ってはなんだが。
数の上ではトモル勢をはるかに上回る。
その数に任せて接近すれば活路はある。
将軍はそう判断した。
おそらくそれは正しい戦い方だっただろう。
敵との距離をつめる。
これに尽きる。
それ以外に勝ち目はない。
実際、接近戦になっていれば、そこまでいければ勝機はあった。
遠距離から攻撃を加える事が出来るのが、トモル側に有利な点だ。
接近すればその利点はなくなる。
また、乱戦になれば、迂闊に銃も撃てない。
そうなれば、純然たる戦闘力の差がものを言う。
確かにトモル側もレベルをあげた兵士を揃えている。
それでも10倍以上の敵を相手にするのは難しい。
最終的に勝利はしても、損害は大きなものになるだろう。
それに、銃は強力であっても、万能ではない。
弾丸をこめなおす瞬間は隙が出来る。
機関銃だって弾切れを起こす。
連射も銃本体に悪影響をもたらす。
砲撃だって、ある一定の距離まで近づけばそうそう撃てるものではない。
下手に撃てば、味方を巻き込む。
そういう状態に持ち込めば、敵勢にも勝ち目はあっただろう。
損害がどれだけ出たにしても、最終的に勝利を得る可能性はあった。
だが、その命令に従える兵士がどれほどいるか。
死ぬと分かっていて突撃するような者がどれだけいるか。
全滅覚悟で戦う者などまずいない。
それこそ、武家の出身者のようなものでもないかぎりは。
いや、武家出身者であってもどうだったか。
そこは分からない。
だが、将軍の考えは、ある面では正しく。
別の面では大きな間違いであった。
それが結果として出てくる。




