415回目 州都攻略 5
この段階での自動車の性能はそれほど高くはない。
最高速度で時速60キロが出るかどうか。
それも、舗装された走りやすい道であれば。
そうでない場所では、時速30キロくらいでしか走れない。
がんばって40キロになるかどうかだ。
それでも、人間の足より速い。
逃げる敵に追いつくのは簡単だ。
その背中に攻撃を仕掛けるのも。
戦闘車両の機関銃は、それを効果的に残酷に行なっていく。
連射する射撃音。
それが鳴る度に敵は次々と倒れていく。
背後から迫り、敵の中を突っ切り、敵の前に出る。
退路を塞ぐように動きながら進む自動車部隊。
それらによって敵の前衛部隊は更に被害を増加させる。
さすがに全滅はしない。
しかし、容赦なく数を減らしていく。
銃を放ちながら通り過ぎていく自動車。
それが陣地に戻った時、敵の前衛部隊は半分近く数を減らしていた。
そうして撤退したからといって、安全というわけではない。
砲撃はまだ続いており、容赦なく後方に配置されていた部隊を襲う。
敵は数を次々に減らしていく。
その場にいる限り、安全地帯などどこにもない。
「なんという事だ」
この軍勢を指揮する将軍はうめくしかない。
顔を青く、赤くしながら。
「あれは何なのだ?!」
予想だにしない攻撃。
それによって軍勢が消えていく。
ありえない事だった。
しかし、現実は現実である。
敵対するトモル勢がとんでもない戦闘力を持ってる事。
それを認めるくらいには、この将軍は有能だった。
その上で策を考えねばならないと理解もした。
退く。
それが一番常識的な指示だろう。
戦って勝てる相手ではない。
攻撃力が違い過ぎる。
ならば、身を守れる所まで退く。
だが、将軍はあえてその逆を指示する。
「突撃」
「はっ、なんと?」
側に控える副官が問い直す。
砲撃音でよく聞こえなかったのもある。
だが、指示内容が信じられなかったのが一番の理由だ。
そんな彼に、そして周囲の者達に将軍は大声で指示を繰り返す。
「突撃だ!
敵に向かって突撃!
それ以外に道はない」
その声に副官は復唱する。
「……突撃、突撃!
各指揮官に指示を!」
それは様々な手段で通達されていく。
伝令で、太鼓や笛の符号で。
魔術による伝達で。
それを受けた各部隊は慄然とする。
「まさか!」
「正気か……?」
「嘘だろ……」
誰もが出された指示を疑った。
しかし、命令は間違いなく突撃を示している。
それを聞いて誰もが背筋を凍らせた。
猛攻を加えてくる敵。
これに突撃をしろと言われて。
「無理だ!」
そんな声も上がった。
だが、命令は命令である。
遂行せねばならない。
各指揮官は将軍の命令を口にしていく。
「突撃!」
それを聞いた兵士達は従っていく。
嫌々ながらも。
そんな敵に向かって、トモル勢は容赦なく銃火を浴びせていく。
それを受けて、敵軍は次々に倒れていく。




