411回目 州都攻略
トモルの軍勢、一個旅団(二個連隊から成る)は州都へと向かっていく。
数少ない戦闘車両を前面に配置し。
その後ろを、自動車に乗った歩兵が続く。
更にその後ろに、少数ながら長距離砲を牽引した自動車が続く。
そうして侵攻する部隊が敵へと向かっていく。
最初に到着した部隊が、拠点となる場所を確保。
陣地を構築し。
その後に後続部隊がやってきて、陣地を強化していく。
更にその後に、友軍であるタカヤス配下の旧氏族の部隊が輸送路を確保していく。
そうしてトモルの勢力は州都へと向かっていく。
その直前50キロあたりの地域に陣取って。
途中にある町や村は当然ながら制圧してある。
その領主の扱いは今までと変わらない。
調略されている、つまり藤園と関係がない者達はその地位を保っている。
だが、そうでない者達は全て処分。
一族郎党の全てを根絶やしにした。
それを恐れて事前に逃亡する者達もいた。
それらは州都に向かい、味方との合流を果たしていく。
それはそれで構わなかった。
余計な手間や弾薬を使う事無く占領地域を増やせるのだから。
手に入れた地域にはタカヤス配下の者達が入っていく。
そのまま領主として着任、今後の統治を担っていく。
また、防衛の為の兵力も駐留する。
そうして確保した街道をたどって、人や物が移動していく。
運び込まれる弾薬や食料、その他の道具や物資。
その運搬を担うのは、たいてい一般の業者である。
軍隊ではない。
軍隊だけで全てを賄うのは無理がある。
危険な地域では軍隊を使わねばならないが。
そうでない場所ならば、一般の業者を頼んで作業をさせていた。
もちろん、商売として依頼をして。
代金だってしっかり払っている。
そんな輸送路を狙う敵を警戒して、護衛も常につけている。
大量の業者を守るために、友軍を用いて。
敵が襲ってくる可能性は比較的薄いが。それでも警戒は解けない。
正面切って戦って勝てないならば、補給を潰す。
それが確実に相手を疲弊させる手段なのだから。
だが、この護衛を快く思わない連中もいる。
戦場での戦闘こそが武人の華、とか考えてる類いだ。
自尊心だけしかもたない人間だ。
戦いに勝つ事を考えてない馬鹿と言える。
残念ながら、友軍の中にはこういう考えの者もいる。
そういった者達は輸送の護衛という任務に不平不満を言っている。
それは当然ながらトモルの耳にも入ってくる。
そういった輩は可能な限り排除していったはずなのだが。
どうしても完全に消去しきれない。
困った事に、そういう奴が重要だったり主要な地位についていたりする。
とはいえ、そのまま放置するわけにもいかない。
そういった輩を見つけて捕らえ、新たな部隊を編成していく。
「そこまで文句があるなら、護衛なんかしなくていい。
戦場で華々しく戦え」
最前線部隊への昇格として。
その一方で、足りなくなった護衛を他の部隊から引き抜いて編成していく。
最前線での勤務に不安をおぼえる者などを中心にして。
ある意味、臆病者と言えるような者達だ。
だが、これは仕方が無い、人には向き不向きというのがある。
そうした配置換えも行いながら、部隊をととのえていく。
本格的な攻略直前であるが。
そんな時期に配置換えや再編成など自殺行為ではある。
だが、放置していたら、更に大きな問題になりうる。
大事な時期であろうと、やるしかなかった。
まがりなりにも、それまで足踏みを揃えていた者達である。
それを分離して別々につなぎ合わせてる。
どうしたって問題は発生する。
だが、不満を抱えているよりは良い。
護衛が嫌なら最前線に。
最前線が怖いなら護衛に。
そうやって可能な限り、一人一人の意思や希望を尊重する。
人間、自分に合わない事をやるほど悲惨な事は無い。
それは必ずどこかで問題となってあらわれる。
そうした再編に時間がとられてしまった。
おかげで、州都攻略の予定が狂った。
だが、それも悪い事だらけというわけではない。
おかげでトモルにとっては好都合な状況にもなった。
敵が州都に集結。
ほとんどの敵勢力を州都近郊に集める事が出来た。
「よーし!」
その事がトモルにはありがたかった。




