403回目 間近にいる敵勢力をまずは叩く 2
情報は既に敵に届いていたようで、敵勢は兵力をととのえていた。
ほぼ全力で出撃し、1000名の兵力が集結している。
それを魔術による遠見や、騎兵による偵察。
更には自動車での広域偵察でトモル側は察知していた。
「結構集まってるな」
望遠鏡────これもトモル領で作られた────を覗いて斥候が漏らす。
「あちらさんも本気だね」
「どうする?」
「急いで戻ろう。
これ以上ここにいても仕方ない」
そう言って自動車に乗った偵察兵は来た道を戻っていく。
彼らが様々な方向に展開し、敵の動きを待っていた。
敵はそれなりの規模で動いてくる。
ならば、通れる道は決まっている。
大軍がまとまって行動出来る道は限られてるのだ。
それを見張っていれば、何らかの動きが見えてくる。
それを見定めた斥候達は、次々に情報を持ち帰る。
彼らの任務は見聞きした事を確実に持ち帰る事。
敵と戦う事ではない。
また、もう少し情報を、と欲張ったりもしない。
そうして観察し続ける事で、敵と接触する可能性も出てくる。
それで捕まったり殺されたりしたら元も子もない。
迅速に素早く撤収────逃げ足の速さも斥候・偵察には必要だ。
そうして得られた情報は次々と部隊本部へと送られる。
それを得た連隊本部は、敵の移動目的地を予測。
対応するために動き出す。
自動車が次々と動き出す。
兵隊を乗せて。
一台につき、5人。
銃剣付きの歩兵銃を構えた兵士を乗せていく。
日本における一般的な自動車。
この世界で作られた自動車も、それとほぼ同じくらいの大きさである。
運転席と助手席のすぐ後ろが荷台となっており、そこに兵士が乗る。
大きさの関係で、5人が限界になっている。
その五人を乗せた自動車が50台余り動いていく。
都合、250人の兵士が一度に移動を開始する。
それらが交互に輸送され、敵との交戦予定地に展開する。
それから自動車は別のものを牽引していく。
車輪の付いた大砲を。
75ミリ長距離砲。
この世界においては、隔絶した破壊力を持つ兵器だ。
これが20門ほど移動を開始する。
操作要員と砲弾も。
到着した長距離砲は即座に設置を開始。
やってくる敵を待ち受ける。
また、敵の位置を把握する為に、偵察部隊が展開する。
電信装置を携えて。
音声を届ける電話はまだ開発されていない。
しかし、モールス信号による電信は既に出来上がっている。
これを用いて時間差無く情報を伝える事が出来るようになっている。
もっとも、無線による通信はまだ不可能だ。
有線による範囲でしか通信は出来ない。
その為、遠距離での通信はまだ範囲が制限される。
それでも、長距離砲への指示を出すのならば問題は無い。
数キロほどの範囲に散らばった斥候・偵察員は、敵の到着を報せればいい。
その為の観測手としての役目を担いながら、斥候・偵察員達は散らばっていく。
そうとも知らぬ敵勢は、合流を繰り返して進行する。
防衛の為に幾らかの兵力は残しているが。
それでも総勢800が動いている。
数だけ見れば、いぜんとして敵勢の方が有利だ。
また、この世界における機動兵種である騎兵も揃っている。
長距離攻撃の為の弓も、更に魔術兵団も。
戦力の質として見ても、この世界では有数のものだ。
大軍とは言えないが、同数で戦えばまず負ける事は無い。
そのつもりで敵も進んできている。
そんな彼らが最初の攻撃を受けたのは、戦闘予定地域に入る数キロ手前。
空から飛来する一発の砲弾によってになる。




