401回目 県を終えて州へ 2
ヒライワツミ王国は17の州からなる。
その州に複数の県が内包される。
場所によって1州1県だったり、一つの州に20近くの県があったりするのでばらつきはある。
だが、この州が県よりも上位にあるのは確かだ。
この州を攻略し、タカヤスの支配下におく。
それが戦略の第二段階になる。
ただ、これはさすがに難しい。
州の大部分も調略はしているのだが。
手が届かなかった部分も多い。
その為、完全な平定は出来ない。
「既にお伝えしてるとおり、その部分は放置します」
タカヤスの前で行われる御前会議。
その場にてトモルはあらためてそう宣言する。
「全てを手に入れるには、人が足りません。
その人は今育ててる最中。
それが終わるまで、いくつかの地域は空白地となります」
「やむをえんか」
タカヤスは小さく嘆息をする。
ただ、それほど大きな失望もない。
出来ない事はタカヤスにも分かっている。
手に入れようにも人がいない。
人がいなければどうしようもない。
人材育成は続けられているが。
その人が育つまで時間がかかる。
その時間を消し去る事は出来ない。
「どんなに早くても、あと2年。
それくらいはかかってしまいます」
「やむをえんな」
タカヤスとしてもそれは仕方がないと思ってる。
「だが、空白地に敵が侵攻する可能性もあるのでは?」
「あります」
それが心配ではある。
「ですので、軍勢を配置して敵を止めます」
それもまた、戦略通りである。
州の境に軍勢を配置する。
それによって敵の侵攻を防ぐ。
これで空白地への敵の侵入を妨げるしかない。
「皆様にはその役目を全うしてもらう」
御前会議に出席した主立った者達。
それらにも告げていく。
居並ぶ者達は、反対する事無く頷く。
既に決まってる事だ。
逆らう理由もない。
言ってることも妥当なものだ。
否定する材料はない。
なによりも。
トモルの軍勢の戦闘力。
それが既に知れ渡っている。
それに同行して一緒に戦おう、武功を得ようというものはない。
戦力差がありすぎて、そんなこと不可能だ。
だいたいにおいて、同じ速度で進撃する事が出来ない。
自動車はおおむね時速30キロから40キロで走る。
それも、何時間でも燃料の続く限り。
馬や馬車でそれに追従する事は出来ない。
戦力以外の部分でも、こうした差がある。
それに、州の平定も重要な任務だ。
それを蔑ろには出来ない。
むしろ、与えられた役目を全うする。
その事に全力を尽くさねばならない。
「また、州都への侵攻は我らが受け持つが。
その間に皆さんにはやってもらう事もある。
それもまた重要な役目。
必ずや成し遂げてもらいたい」
トモルの言葉に、再び全員が頷く。
トモルが州都攻略をしてるのと同時に。
他の者達も州内各地に向かっていく。
調略が済んでる者達と合流し、近隣の敵勢力を牽制するのだ。
これにより、州の制圧を進めていく。
また、州都に向かうトモルの軍勢。
そこへの補給路の確保も任されている。
進撃速度の関係で一緒に行動は出来ないが。
物資輸送と輸送路の警護は出来る。
それもまた重要な役目だ。
戦闘部隊の生命線になる。
それらが潰えたら、戦争遂行そのものが難しくなる。
なので、これらも重要な役目となる。
たとえ主要戦線ではないにしてもだ。
必ずや衝突は起こり、戦闘になるだろうから。
それに勝利せねばならない。
「では、手筈通りに。
こちらについてる者達との合流を急いでほしい」
その言葉に従い、戦闘部隊は動き出す。
県を制圧してから二日。
間に一日をおいただけで進軍が開始される。
トモル以外の軍勢は州の各地域に。
トモルの軍勢は、一路州都へ。
それぞれの任務を果たすべく進んでいく。




