40回目 やりたい事と自分に課せられる面倒の狭間で
やりたい事が決まり、この先の方針みたいなものも出来てきた。
明確な言葉になってるわけでも、具体的に何をしていくという計画があるわけでもない。
だが、やっていくべき方向は定まった。
貴族の中にいる屑な連中を叩きのめしていくという。
世界や社会の観点からこれが正しいのかどうかは分からない。
だが、トモルの視点からすればこれほど正しい事は無い。
(悪い事は誰がやろうとも決して許されない)
単純明快なこの考えがトモルの中にある。
本来ならこれが常に守られてなければならないはずでもある。
だが、そうなってないのも確かで、あってはならない悪しき事も起こっている。
それを抑制しようにも、力がなくて諦めなくてはならないという事になってるのだろう。
だが。
トモルにはその力がある。
あるならば使わねば損である。
(まあ、簡単にはいかないだろうけど)
前世における50年ほどの人生経験も加えて考えるので、これくらいは分かっている。
なので、完璧はさすがに諦める。
幾ら秀でた力があるとはいえ、全てをこなす事が出来るわけではない。
あくまで自分の出来る範囲で、やれる事をやるに留める事にはする。
だが、それでも心が浮き立っていく。
自分が他よりも各段に優れた力を持ってるからだ。
おそらく、しなくていい我慢は各段に少なくなる。
やりたい事を無理強いしてでも通す事が出来る。
それが今は嬉しかった。
もっとも、すぐに何かが出来るというわけでもない。
やはり子供であるからやれる事に限界がある。
単独の能力は優れていても、それも他の大人より幾らか優れてるというだけ。
何より子供であるので、社会的な力が全く無い。
それは今後成長していく中で作り上げていかねばならない。
(まあ、やるだけやってみるか)
何をしていかねばならないのかすら、まだ見えてない。
それでも進むべき道へとまっすぐに進んでいこうと思った。
当面は、レベルを上げること、経験値を稼ぐ事に専念する。
今後自分だけではどうにもならない事もあるだろう。
しかし、自分が強くなくては本当に何も出来ない。
他の協力を得るにしても、それはまず自分がある程度何かが出来る事が前提である。
何もしない者に手を貸す者はいない。
何かが出来る、少なくともきっかけを作るくらいの能力は持ち合わせていなければならない。
その為にもレベルを上げていく必要がある。
幸いにも、その為のモンスターは庭先にいくらでもいる。
辺境に生まれた事がありがたかった。
ただ、それもいつまでもというわけにはいかない。
7歳で貴族としてとりあえず表舞台に立ってしまった。
ここからはそれなりの振る舞いを求められてしまう。
今までも何かの折にあちこちに連れ回されてきたが、それらとは趣が異なってくる。
更に、より貴族らしくあるために、専門の学校に送り込まれる事になる。
そこには8歳から入学し、12歳まで貴族としての振る舞いを学ぶ事になるという。
礼儀作法や心得(一種の思想教育と言える)を学ぶらしいのだが、非常に面倒であった。
そんな事の為に8歳からの時間を潰されるのかと思うと腹が立つ。
だが、避けて通るわけにもいかない。
上手くそれをこなしていかねばならない。
そんな学校があるわけで、当面の猶予は8歳までとなる。
それまでに可能な限り経験値を稼ぎ、レベルを上げておかねばならなかった。
(もう、親の目を気にしてるわけにもいかないか)
言いつけなんか守ってられない。
冒険者の所に入り浸り、徹底的なモンスター狩りをせねばならない。
経験値を稼ぐには休んでる暇などない。
入学までも残り時間の全てをモンスターに費やすつもりでいかねばならないだろう。
(でも、家の事は弟とかに押しつけたいんだよなあ)
生まれた弟が家を継いでくれれば、貴族の面倒から解放される。
そう思うと、自分が無理する必要はないのではと思う。
だが、貴族の家にいるからこそ得られるものもあるはずである。
一般庶民では決して接する事の出来ない国の中枢に少しは近づける。
この特権を手放すのも惜しかった。
(ほどほどに上手くやるしかないか)
腹をくくっていく。
これからのために。
この話を書いてて感じたり思ったりした事
BOOTHにそんなものをまとめたものを置いている
↓
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/485234953.html




