397回目 まずは足場固めから
辺境王族イツキヤマ当主タカヤス自身も兵を動かした。
それに呼応してタカヤス側の領主も動き出す。
トモルの息のかかった者や、旧氏族の下にある兵力。
それらが行動を開始する。
トモルもその中の一軍として動いていく。
もちろん、全ての中心として。
一人の領主が率いる軍勢としては最大最強だから当然だ。
これが先頭を切って敵に向かっていく事になる。
また、トモル自身も全ての行動の指示を出す。
タカヤスが総大将という事になってるが。
そもそもとして事を動かしていたのはトモルだ。
そのトモルが指揮を執るのが妥当で当然である。
また、タカヤス自身もトモルに指揮権を委ねている。
問題は無い。
通常、こうした事をすれば、他の貴族が黙ってないが。
そういった事はタカヤス側には発生しない。
タカヤスの周辺にいる者達全てが、トモルによってその地位を得ている。
トモルが何をしてきたのか誰もが知っている。
そんな人間に楯突くような馬鹿はいない。
何より、トモル自身の能力の高さを誰もが知っている。
自分らを凌駕する能力の持ち主だ。
その恩恵を得られるなら、その方がいい。
少なくともおかしな指示は出さないはずである。
ならば、それに素直に従った方がマシというもの。
そう考える事が出来るくらいの頭は持っている。
そのトモルの指示に従い、軍勢が動き出す。
規定の戦略に従って。
「まずは県内を平定する」
イツキヤマを含む県。
その内部はほぼトモルの息のかかった勢力になっている。
しかし、まだ完全に統合されてるわけではない。
藤園の息のかかった者達はさすがにいないが。
それ以外の勢力の者が残ってる。
再三にわたってタカヤスにつくように言っていたのだが。
それをはねつけてきた連中である。
「こうなる前にどうにかしたかったが」
事が起こるまでに味方に引き込んでおきたかった。
しかし、もうそれもどうにもならない。
「この時点で味方になってない者など信用できん。
全員根絶やしにしろ」
どんな言い訳をしようと、味方ではない。
中立や日和見など、都合の良い敵対の一種である。
そうやって自分の勢力を温存し、漁夫の利を狙ってる可能性すらある。
そんな輩を放置するわけにはいかない。
最悪の脅威になりかねないのだから。
「そして、今回の動員に参加してない者。
これも同罪だ。
味方でありながら、協力しないなど、裏切りでしかない。
そういう奴らも潰せ」
味方に連なってる者も容赦しない。
むしろ、味方であるからこそ、より一層厳しくあたっていく。
一応、事情は汲み取る。
急な怪我や病気などはやむをえない。
寿命も含めて、担当者が死去してる場合もある。
その逆に、担当者が幼い場合もある。
こういった場合はさすがに事情をくみとった。
ただ、その場合でも代理人をたてるとか。
やりようはある。
それを促し、可能な限りの参加を求めた。
さすがに何もしないというのは認められない。
しかし、そうでない連中は容赦しない。
それは味方についたふりをしてる敵である。
「行け」
トモルの命令で県内各所に軍勢が向かう。
これがイツキヤマ軍と言われる彼らの、初出撃となった。




