350回目 何をするにせよ時間がかかるのがこの世界
「とりあえずこんな所か……」
辺境王族による声明の発表。
それによってとりあえず釘をさしていく。
これにより、多少なりとも時間を稼いでいく。
あわせて、国内向けに様々な工作を開始していく。
藤園につくか、辺境王族につくか。
ここでどちらの旗を掲げるのかをはっきりさせておく。
中立など一切認めるつもりはない。
中立とは、消極的な敵対である。
どちらにもつかず、都合良く動こうなどというのは虫が良すぎる。
そんな日和見は一切許さない。
味方についた者だけが味方である。
こうしておかねば、足下を見られる。
自分の勢力を売り込もうとする連中に。
そういう輩が参加してきてしまったら、後々の面倒になる。
たとえ勝つことが出来ても、そいつらが様々な介入をしてくる事になる。
身銭を切らずに、美味いところを持っていこうとする連中だ。
でなければ、様子見のための中立などしない。
それよりも、たとえ不利であっても賛同してくれる者の方が大事だ。
苦しみを分かち合おうという者だけが信じるに値する。
まして、国の根幹に関わる部分の問題である。
王族の条件、王位継承権。
これを恣にする者達への糾弾である。
すぐさま賛同しないような者達など、頼みとする事は出来ない。
王族を立てる事が出来るのか。
その気があるのか。
それをはかるのもあって、今回の糾弾を発表させた。
トモルからすれば、これは篩である。
国内の様々な者達を分別するための。
当然ながらトモルは即座にこれに賛同する。
発表させた本人がいうのも何だが、一応は臣下の立場である。
貴族としての立場を表明せねばならない。
そして、即座にこれを行う事で、辺境王族の臣下の中で一番の立場を手に入れる。
そうして、今後やってくる者達を下に組み込んでいく。
たとえ、どれほど地位が上であってもだ。
そんなもの、既に考慮するに値しない。
後からやってきた者に大きな顔をさせるつもりはない。
それにだ。
高い地位にいる貴族であるならば、なおのこと即座に馳せ参じねばならない。
地位に伴う責任として。
それが出来ないのに、なぜ高い地位にいるのか?
王族の臣下の立場として、それはおかしなものだ。
もちろん、情報が伝達するまでの時間は考える。
ラジオやテレビや電話のない世界だ。
インターネットなんてありゃしない。
そんな世界で、声明発表と同時に意思表示は出来ない。
どうしても時間差が発生してしまう。
さすがにそこは考慮するしかない。
なにせ、辺境王族の声明を周辺に届けるのは、伝令だけである。
駅伝方式で中継を何度もはさみながら。
そうして声がようやく届く。
魔術による通信を用いれば、多少は早くなる。
だが、これもそれほど普及してるわけではない。
一部の者達には伝わっても、国内全体というのは難しい。
なので、ある程度の余裕は見なければならない。
辺境王族の王族領周辺ならば、伝達に1日か2日。
数十キロ圏内なら、早馬などを使っても、2日や3日はかかる。
更にそれより遠くとなると、到達まで一週間や二週間はかかる。
そして、王族の声明が届いたとして。
それを聞いて返事が返ってくるのに同じくらいの時間がかかる。
それも、即座に決断をしたとしてもだ。
略式で良いから書面をしたためるとして、準備に時間がかかる。
身の振り方を考える時間も加えると、最低でも1日2日は必要になるだろう。
そのあたりはさすがに考慮せねばならない。
ただ、それを考慮にいれても、即座の返事が求められる。
それが無いという事は、敵に回ったと見なすことになる。
絶対に味方ではない。
(さて、どうなるやら)
誰がどれくらい賛同するのか?
それが気になるところだ。
正直に言えば、全く期待は出来ない。
それでも、
(少しは骨のある奴がいればいいけど)
そんな気分で返事を待つ。
仮に返事がないならそれでも良かった。
それが多くの者達に混乱を与える事が出来るのならば。
そうなってくれれば、その間の動きは止まる。
止まってくれれば、万事において隙間が生まれる。
今はその隙間がもっとも欲しいものだった。
とはいえ。
それでも味方が増えるに越した事は無い。
出来るだけ多くの味方が来てくれるのを願いはした。
かなうとはこれっぽっちも思わずに。




