325回目 求める強さの水準
確かにトモルは強い。
個人で勝てる者はいないだろう。
だが、国全部を相手にするにはまだ足りない。
もとより一人で全部出来るとは思ってない。
だからこそ、軍勢を強化し、集団で勝てるようにしようとしている。
自領の発展をさせてるのもそのためだ。
だが、それはトモル自身の強さを不要としてるわけではない。
強力な軍勢を作っても、基本的な勢力はまだ小さなものだ。
当然、繰り出せる軍勢の数も限りがある。
今のトモルの勢力では、数百人が限界だろう。
臨時の増加を考えても、数千には届かない。
その程度の数で国そのものと戦う事は出来ない。
やろうと思えば、国は数千どころか数万の軍勢を動かす。
最大規模で動員を行えば、10万を超える。
そんなもの相手に喧嘩を売ってるのだ。
それが出来るほどの権勢を持つ貴族に。
「少しでも強くなっておかないと」
この先、その強さに頼る場面が出てくるだろう。
その時、何も出来ないではどうにもならない。
少しでも手数を増やすためにも。
少しでも威力を上げるためにも。
能力全体の底上げが必要だった。
だからこそレベルの上昇に励む。
能力を少しでも強化しておくために。
少しでも相手を上回っておく。
そうすれば今後の展開が有利になる。
ただ、勝てばいいのではない。
圧倒して勝たねばならない。
でなければ、未来がなくなる。
トモルのものだけではない。
トモルに連なる者達の。
トモルが生きてるうちはいい。
だが、死んだらどうなるのか?
その時、相手を殲滅出来ていなければ、その者達に累が及ぶ。
それは避けねばならない。
だからこそ、超絶な力をもって敵を殲滅せねばならない。
報復など決して出来ないように。
トモルについた者達を守るには、そうするしかない。
相手を残しておくわけにはいかない。
少しでも相手を残せば、それらがのし上がってくる。
どれだけ時間がかかっても、そうしてくるだろう。
何十年どころか、何百年かかっても。
二代三代ではなく、何十代と世代を重ねて。
それをやってきた一族が相手なのだ。
それが貴族なのだ。
そんな連中相手に、トモル側の者達が対処出来るのか?
策謀渦巻く貴族社会で頂点に立つような連中に。
(無理だろうな……)
悲観するわけでもなく。
身内を見下すわけでもなく。
事実としてそう思う。
(それだけの素養がない)
素質や才能。
そういった部分の問題もある。
その部分で敵に大きく劣る。
だから、勢力を強化するだけでは不安だった。
相手をしのぐ勢力になれば大丈夫…………そんな風には思えない。
策謀や謀略とは、劣勢を覆すためにある。
もちろん、優勢であるにこした事はないだろう。
だが、劣勢でも決して負けない。
むしろ、相手を覆す。
それをなすのが、策謀や謀略である。
それを練りに練ってきた連中である。
単に勢力が大きいだけでは意味がない。
敵に負けないほどの謀略を駆使できねばならない。
だが、それだけの力が味方にあるのか?
方法を熟知してる者がいるのか?
それらをためらいなく使える者がどれほどいるのか?
それが心許ない。
そういう部分の蓄積がない。
トモル個人ではともかく、勢力全体でそういった力がない。
頭数だけ揃って居ても意味がないのだ。
それが弱点だった。
だからトモルは、自分が生きてるうちに全ての決着をつけようとしている。
敵を排除し、自分の身内が生き残っていけるように。
もちろん、必要な教育を施す。
生き残る術を身につけさせる。
敵を殲滅し、安全を確保出来るように。
だが、それはそれとして、状況を有利に進められるようにしておかねばならない。
その為には、トモルだけで敵を崩壊させられるようにしておきたい。
(まだ、もうちょっとレベルをあげておかないと)
必要な能力にはまだ届いてない。
それが分かるからレベルアップに励む。
モンスターの巣を見つけて破壊していく。
(せめて、レベル40は超えておかないと)
それを目安にしている。




