32回目 危惧はごもっともではあるのだが
気合いも覚悟も詰め込みなおし、あらためてレベルアップに邁進する事を決める。
その為にも、それが出来る環境を作っていく事にする。
冒険者に紛れてモンスターを倒し、可能な限り経験値稼ぎを狙う。
とはいえ、監視の目がきつくなったので、これも簡単には出来ない。
そこをどうするかはまだ妙案が出ないでいた。
(まあ、それはそのうちどうにかしよう)
レベルアップについては今後どうにかするとして、まず必要なのは冒険者の誘致である。
それを父親である領主に認めさせない事にはどうにもならない。
もっとも、村の治安の事を考えてる父に、冒険者の呼び込みなどという大胆な事が出来るとは思えない。
(やっぱ、既成事実を作るしかないか)
なし崩しで冒険者を居座らせるしかなかった。
その第一陣としてやってきてくれた冒険者には足繁く通ってもらう。
モンスターがそこそこ出現する狩り場だという事で。
そこで金を作ってもらい、お願いした大型テントを買って居座ってもらう。
また、そんな第一陣に続いてやってきた者達にも似たような流れで居座ってもらう。
もちろん村の近くはさすがに無理なので、そこそこ離れたところにではある。
だが、十数人程度の冒険者が居座るだけでも、モンスターの被害は大分低下していった。
おかげで村の者達は冒険者を少しずつ歓迎し始めた。
さすがに諸手をあげて、というわけにはいかなかったが。
その一方で苦い顔をしてるのがトモルの父である。
武装集団が近隣に住み着いてるとなれば穏やかではいられないのだろう。
何とかして退散させられないものかとあれこれ考えている。
そんな父にトモルは、
「父上!
冒険者がモンスターを倒してくれれば万々歳です!」
と積極的に利点を口にしていった。
「いや、それは分かるのだがな」
我が子の言葉に父は苦い顔をする。
それくらいは父にも分かっている。
冒険者がモンスターを倒してくれれば、これほどありがたい事は無い。
だが、制御不可能なほどに膨れあがってしまったら、この領地の兵力だけでは抑えきれない。
実際、数十人の冒険者はそこらの地方領主の軍勢を覆す力がある。
実際に地方領主を襲ったという事件もある。
トモルの父の懸念はもっともと言えた。
だが、それにもトモルは反論をしていく。
「それなんですが……」
何度か接触していた冒険者から聞き出した事を口にしていく。
それは、反乱を起こした冒険者と地方領主についての話であった。




