313回目 借金問題の解決、主に貸し出す方の救済
王族、宗教と少しずつ手を打っていく。
そして、接収した領内におけるもう一つの問題にも着手していく。
これはそれまで統治していた貴族が残した負の遺産である。
商人からの借金だ。
領内経営において、どうしても金が必要になってしまう。
これは致し方ないのだが、それの度が過ぎてるところが多々あった。
普通に領内統治をしていれば必要の無い程の金額を。
なんでこんなに必要だったのかとトモルは疑問を抱いたほどだ。
派遣されたトモルの配下も。
その理由は、元統治者達の精神を操作して自白させて判明する。
上位貴族への献金。
だいたいがそれが理由である。
とはいえ、献金には二種類ある。
地位や栄達を求めて自ら支払ってるものと。
上位貴族から強請りたかりで脅迫させられたもの。
この二つが主な理由である。
もちろん、領内整備で必要というのもある。
急な出費でにっちもさっちもいかない、というのもある。
こういった理由も確かにあった。
だが、全体からすると少数である。
急な出費といっても、返済しきれないほどの借り入れをする所は少ない。
そんな事をしたのは、そうまでしてでもやらねばならない事があったところだ。
こういったまっとうな理由にはおおいに同情できる。
また、脅迫されて献金せざるえなかった者達も哀れだ。
しかし、自らの栄達や地位の為に無理な借金をした所は別だ。
また、そういった連中は借りたものを踏み倒そうともしていた。
こうなってくると、かわいそうなのは貸金業者だ。
貸したものが返ってこないでは仕事にならない。
挙げ句、こうした借り入れは、事実上の強奪に等しい。
返済を求めれば脅迫され、実際に様々な処分をくだされる事もある。
貴族への不敬として死罪・財産没収など珍しくも無い。
では貸さないようにしようとしても、それはそれで処分の理由になる。
こうなれば、泣く泣く廃業するか首をくくるしかない。
別の地域で仕事が出来ればいいのだが、それも難しい。
商売してるところ以外に転居する事がそもそも難しい。
仮に出る事が出来たとしても、転居先で商売が認められるかどうかも分からない。
転居先の領主が営業許可を出すか分からないからだ。
そんな貸金業者達をトモルは救済していった。
まず、不当な借金をこさえた貴族は、財産没収ののち斬首。
資産の全てを換金してとりあえずの返済にあてた。
それで足りるならそれで事は解決する。
だが、それでもどうにもならない金額の場合もある。
本当に莫大な場合で、返済が簡単には終わらないものだ。
そういったものは長期的な返済でやっていく事になる。
トモルがこさえた借財ではないが、これも仕事と思って受け止めていく。
とりあえず返せる分は返していく。
これにより、貸金業者に一息つかせる。
そうして即座に新たな借り入れを行う。
ただし、以前の借金額より少なめに。
例えば、100万円借りていたら、100万円を返す。
その直後に90万円を借りる。
手元に少しずつ金を残す形で、徐々に返済していく。
膨大な借金額を削るための、苦肉の策だった。
だが、こういった手段が使えるだけでもまだマシというものだろう。
その分、領主としての事業も縮小していく。
どうしても削れない部分も、心を鬼にして削っていく。
返済を考えればそれもやむをえない。
無い袖は振れない。
無理して振れば、更なる破滅が待っている。
ただ、事業縮小にあわせて、可能な限り税率は下げた。
だいたいにおいて、借金返済の為に税率が高くなっていた地域がほとんどだ。
その税率を少しでも下げて、領民の生活への圧迫を取り去った。
何せ、領民への税率が60パーセントや70パーセントになってる所もあったのだ。
通常、30パーセントが基本なので、二倍以上の負担である。
それでやっていけなくなった者が逃げ出したりもしている。
この税率をどうにか下げて50パーセント以下におさめるようにした。
それでもまだ税率は高いが、領民は少しだけ息を吹き返していく。
何にしても、重税ほど民を虐げるものはない、という好例かつ悪例だろう。
そして、思わぬ結果も出てくる。
税率を下げた事で、かえって税収が増えていった。
それはさほど大きなものではないが、確かに税収は安定した。
少なくとも減少はしなかった。
税率が下がった分、商売などが多少は活発になった。
農民の逃亡なども減って、収入が安定していった。
こういった事が積み重なった結果だろう。
税率と税収は決して一致しないという良い見本になった。




