304回目 たとえ末端でもその地位は大きく高いのだから、利用する価値はある 5
こうして王族領は文化の発信地になっていく。
教養を身につける場所となっていく。
何もない所に人を集め、賑わいを生み出していく。
特に産業のない場所に文化をもたらした。
それは物を生み出しはしないだろう。
しかし、人を作り出していく。
教養を備えた文明人というものを。
それは今後この地域における発展の土台となっていった。
必要な人材を生み出す場所として。
学問都市、学研都市といった様相をこの場が示しはじめていく。
そうなるまでにまだ少し時間が必要であるが、その方向性は既に打ち出された。
これだけの事をするきっかけを作ったのがトモルである。
王族もそうだし貴族も無視する事は出来ない。
糾弾しようにも、そんな事をすれば功労者を貶める事になる。
さすがにそれは外聞が悪い。
王族もトモルへの表彰を重ねるしかなくなる。
彼からすれば成り上がりの辺境の田舎者だ。
しかも最近は国をおびやかしてるという。
しかし、それでも自分にしてくれた事を放置するわけにはいかない。
与えられた分に対しては、多かれ少なかれ報いねばならない。
問題なのは、トモルの奉公が度を超えてると言えるほどな事だった。
成し遂げた事を考えればかなりの報いを与えねばならない。
しかし、王族が出来る事と言えば表彰くらい。
まさか領地を与えたり、宝物を用意する事は出来ない。
それが出来るなら苦労はしない。
王族といえども、実態は少し羽振りのよい辺境領主といったところである。
そんな辺境王族に出来る事は高が知れていた。
だが、トモルからすれば王族からの表彰で十分と言えた。
当面はそれで貴族連中からのちょっかいをかわす事が出来る。
ここまでやった者を貶めたら、貴族としては体裁が悪い。
トモルへの非難が王族を巻き込む事になる。
王族から表彰された者なのだから、それへの侮蔑は表彰した王族への不敬になる。
そういう状況が出来上がるだけで、トモルからすれば上出来だった。
なのだが、王族は王族としてやらねばならない事もある。
功績に報いねば支配者として問題になる。
相手が辞退したとしても、全く何もしないわけにはいかない。
そんなわけで、トモルを呼び寄せてそれなりのもてなしをしていく事になる。
それくらいしておかねば、王族としてのあり方を問われかねない。
トモルとしても、そういった事を断り続けるわけにはいかない。
たとえ本心からの謙遜であっても、ある程度は受け取っておかねば王族への無礼になりかねない。
それは避けておきたい事だった。
これから利用しようとしてる立場としては。
なので、仕方なくお呼ばれされる事にした。




