299回目 いつまでも相手がおとなしくしてるわけもないので、対策をしていかねばならない
順調に進んでいく訓練。
そのおかげで人は次第に成長していく。
本来ならありえない速度で。
新興で人材不足な柊領にとってはありがたい話だ。
だが、それでもまだ人材は圧倒的に足りてない。
それほどまでに、領地の拡大に人手がおいついてこなかった。
それもいずれは時間が解決してくれる。
しかし、その間に余計な介入をされる可能性がある。
それをどうするかが問題だった。
今のところ貴族は、トモルがほどこした魔術などの影響で混乱をしている。
その為、他にかまってられない状態になっている。
しかし、それがいつまでも続くわけがない。
ある程度落ち着いたら、何かを仕掛けてくるだろう。
あるいは、既に仕掛けているのかもしれない。
それらへの対処が必要になる。
「やるしかねえか」
そんな状況打破の為に、とある手段を実行に移す事にする。
その方法は以前から考えていた事ではあった。
ただ、いつ頃やるのかを見極められずにいた。
どんな時点で行えば上手くいくのか、どの段階では問題が発生するのか。
常人を越える能力を持つトモルであっても、はっきりとさせる事は難しい。
なので、どうしても二の足を踏んでいた。
しかし、もうそうも言ってられなくなってきている。
何はなくとも、貴族からの喧嘩を買ってるのだ。
手をこまねいてる時間などありはしない。
打てる手はなんでも打っていかねばならない。
それが成功するかどうかは分からなくても。
(下手な鉄砲、数撃ちゃ当たるを信じるしかないか)
策の全てが成功するわけがない。
だから、何でも手を打っていく。
成功率は下がるが、そのうちどれかが大当たりすればそれで良い。
その考えで事を進めていかねばならない。
そもそも、やれる事もそう多くは無い。
トモルの能力は高い。
しかし、その能力だけで全てをこなせるわけではない。
更に能力が高くなればどうなるか分からないが、今は社会的な力も必要だ。
それは、領地の国力と言える。
どれほどの人を養い、どれほどの産業を抱え、どれほどの影響力を持つか。
その全てにおいて優位性をもたねばならない。
これらがトモルの手足にもなるのだから。
その手足はまだまだ心許ない状況である。
質はそれなりに高くなってはいる。
モンスターを相手に経験値を稼いでいるのが大きい。
しかし、絶対的な数においてはまだまだ敵に劣る。
もし万が一、敵である貴族がひとまとまりになって襲ってきたらどうしようもない。
幸い、貴族同士で足の引っ張り合いをしていてくれるので、そういった心配はしなくても良い。
ただし、連中はトモルという共通の敵を前にしている。
そうなれば、反目を一時的に棚上げしてくる可能性は十分にある。
そうならないように対策をしていかねばならない。
そうなっても問題がないような対策もしていかねばならない。
今回行おうとしてる策は、そうした対策の一つであった。
そんな事を考えてから数日後。
トモルは迅速に行動を開始し、行動に移っていく。
それはトモルの近隣にいるとある者への使者をたてる事で始まった。
その使者が向かうのは、この地方にいるとある御方。
この地域や地方をおさめる貴族を更に超える存在。
王族である。




