284回目 やらねばならない様々なお仕事 2
このため、学校教育というものをとにかく始めた。
最低でも前世の日本における小学校くらいの内容を身につけてもらうために。
その為に子供を集めて教育をさせる事にした。
しかし、これがやはり難航する事になる。
日本の過去がそうであったように、この世界の子供達も家の貴重な労働力であった。
いずれ外にだすであろう次男三男とそれ以下の子供も例外ではない。
それらを自分達の実入りになりもしない学校に通わせる事を拒否する親は多い。
そもそもとして学校に通わせてる間の養育は各家庭でもたねばならないのだ。
飯を食わせて寝床を与えて着る物も用意する。
それでいて田畑や家業を手伝うわけではない。
寺子屋ならばせいぜい一年か二年ほど。
それも余裕のある時に通わせる事が出来る。
だが、トモルの目指す学校教育は数年間は最低でも必要になる。
その間、ほとんど一日中教育にとられてしまうのだ。
そんな得にならない事を誰がするのか────である。
このため、まずは養育の負担を取り除く事から始めねばならなかった。
学校に通わせる子供達を学校で引き取る形になる。
つまりは寮生活である。
ここまでして、初めて子供を学校に通わせるのを承諾する者が出てきた。
それでも問題が解決したわけではない。
幾ら教育を施そうと思っても、教師になれる人材がいない。
いたとしても、教える内容を示す教科書もない。
これらも用意しなくてはならなかった。
仕方なく、教師は貴族の学校などを退職した者などを集めた。
引退した者を引っ張る形だ。
また、教科書の内容もそのままでは使えないものがあった。
どうしても貴族視点の内容になっており、貴族の偉大さをたたえるような内容が多いのだ。
これは国語で用いる文芸作品や社会や歴史の授業で顕著になる。
そんなもの、庶民や平民では必要がない。
もう少し客観性のあるものが欲しかった。
なので、これを用意するだけで大変な労力になってしまった。
とりあえず役立ちそうなものを片っ端から集めた。
どうしても足りない部分はトモルの持ってる技術と能力値を用いて作成もした。
そんなわけで、生徒を集めるにしても受け入れ体制がまだ完璧ではない。
どうしても限界が発生してしまう。
教室などの入れ物はともかく、そこで教える人材がどうしても少ない。
機材は言うに及ばず。
このため、最初の学校は生徒数60人から始まった。
人口1万人を超えてまだまだ多くの人間が流入してるにもかかわらずである。
出来る限りこの状況を、早急に改善したかった。




