28回目 冒険者の誘致
トモルの言う通り、モンスターはそこらにいる。
その影響は免れない。
可能であるならば駆除を常に行いたいくらいには。
だが、そうするだけの人手も無いのが現状だ。
だからこそトモルは、冒険者を呼び込んで状況を打破したいと考えていた。
「けど、泊まるところとかどうすりゃいいんだ?
ここ、宿とかもないだろ」
「まあ、そうなんだよね」
「そりゃあ、こういう狩り場があるなら願ってもないけど。
でも、長居が出来ないならなあ」
冒険者側からの問題としてはこれがある。
モンスターがいれば稼げるのは確かだ。
しかもこのあたりは、数は多いがそれほど強いものはいない。
レベルの低い者でも、数を揃えればそれなりの稼ぎにはなるはずである。
だが、逗留が出来なければ何の意味もないのだ。
「そこをどうにか出来ないと、どうしようもないぞ」
「うん、それは承知してる」
トモルとてそれは理解していた。
「それで、もし良ければなんだけど、長期滞在用の大型テントとか用意出来ないかな。
それでとりあえず逗留してもらいたいんだ」
「おいおい……」
さすがにそれはどうなんだと冒険者も思った。
だが、トモルは至って真面目である。
「とにかく既成事実を作らないと。
正式には認めないにしても、そこで活動してるって実績を作るんだ。
それも出来るだけ大勢で。
そうすりゃ、モンスターを撃退してるありがたみも分かるはずだし。
村の人達も、簡単に追い出したりはできなくなるよ」
「押し込み強盗みたいだな」
「居座るって意味ではその通りかもね」
冒険者達の言うとおりだった。
強引に居座るという意味では押し込み強盗に近いかもしれない。
だが、相手が違う。
これが人間相手なら大問題だが、モンスターなら英雄様になる。
生活を蝕む存在を撃退してくれる者を拒む理由は無い。
「だから、無理矢理にでも村の外に陣取って欲しいんだ」
「いいのか、領主の息子がそんな事言って」
「いいよ、領主からすれば、モンスターの害を取り除く事が出来ればありがたいんだし」
父親をすっとばしてトモルはいけしゃあしゃあと言い放った。
冒険者達は苦笑を通り越して呆れ笑いをするしかない。
「それにね。
逗留するとなると、食事も必要でしょ?
その時に村で採れた野菜を買ってくれればありがたいから」
「本当に抜け目ねえな」
子供ながら恐ろしいと冒険者達は笑った。
だが、悪い気はしないらしい。
「分かった。
他の連中にも声をかけてみるよ。
大型のテントも何とか調達してみる」
「うん、お願い。
モンスターの核は、やってくる行商人に売ればいいから」
「……本当に抜け目ねえな」
こいつ、本当に子供かと冒険者達は思った。
もちろん違う、中身は前世の記憶を持つおっさんである。
だが、その事を冒険者達が知る由もない。
異様なほど頭が回る子供に薄ら寒いものを感じるだけであった。
 




