279回目 とりあえずこれだけは作りたい
体制をととのえる中で、同時に研究開発も進めていく。
その為の様々な基盤はまだ出来上がってない。
しかし、求める段階や水準に到達出来る様筋道は作っておきたかった。
特に今後の発展を考えれば、どうしても手に入れたいものがある。
それが開発出来るようにしておきたかった。
何より欲しいのは、ワープロである。
それも、図形などを使った資料を作成出来るものだ。
トモルの頭の中にあるものを資料として残すために。
そうでなければこの発展がトモル一代のものとして終わってしまう。
死んだ後の事まで責任はもてないが、それでも出来るだけ長くこの繁栄は続いてもらいたかった。
これも結婚をしたからだろうか。
どうしても次の世代を意識してしまう。
というより、二人の嫁との間に子供が生まれたらと考えるからだろう。
以前はそうでもなかったような気がするが、結婚をしたらどうしても意識してしまう。
自分の血を引く子供。
その子供が生きていく未来。
それをどうやって確保するのか。
どのように構築していったら良いのか。
それを考えたら、いてもたってもいられなくなった。
その為にも、まず自分の勢力が安泰でなくてはいけない。
他所からの介入で潰れてしまわないようにしたい。
そうなると堅固なる体制がどうしても必要だった。
それも、トモルが手に入れたような巨大な能力によって成り立つものではない。
これから生まれてくる子供がトモルのような能力があるとは限らないのだ。
むしろ、他の者達と同等の一般人である可能性の方が高い。
そんな子供達が安穏として生きていられる状態を作るならば、能力によらない強固さが必要になる。
それを示すためにも、トモルの頭の中に浮かんでくる様々な智慧を残したかった。
しかし、それを筆と紙で残すのは不可能だった。
書き留める速度にどうしても限界が発生してしまう。
いくらトモルの能力が高いといっても、やれる事には限界がある。
この問題を解決する為のワープロだった。
執筆速度を上げるためである。
ただ、それを作り出すためには様々な土台が必要になる。
電気にICやLSIなどの電子チップ。
それらを作れるようになるまで科学水準を上げねばならない。
道は長く遠く険しいものになる。
そこまで行かなくても産業を底上げするための道具は欲しかった。
蒸気機関がその一つになる。
産業革命の代名詞のように思われるこの機械。
これをとにかく作り上げたかった。
出来上がれば、鉄道などによる大規模輸送が可能になるだろう。
また、産業においても大きな力を発揮するはずだ。
そうでなくても、一つの指標としてこれを作り上げたかった。
また、銃も欲しかった。
こちらは戦争の為である。
騒動が権謀術数の範囲におさまってる間はまだ良い。
だが、それらはいずれ戦争に発展する可能性がある。
そうなった時の為に、対抗出来る戦力を作り上げねばならない。
その為に銃が必要だった。
扱いに技術や力が必要な弓や剣などと違い、扱いそのものはそれ程難しくはない。
構えて引き金を引くだけだ。
これならば体格や機敏さといった才能に頼らずに済む。
その銃を出来るだけ早い段階で手に入れたかった。
他にも欲しいものは山ほどある。
しかし、それを瞬時に手に入れる事は出来ない。
段階を踏んでとにかくやっていくしかない。
その為にも、知識を記しておかねばならない。
何より、
(手書き、面倒臭い!)
この手間から解放されたかった。




