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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第7章

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260回目 教会が無いなら、代わりを作れば良いじゃない 12

 信徒同士の殺し合いが進む。

 数もどんどん減っていく。

 まだ冒険者達を上回るだけの人数がいたのに、それを更に減らしている。

 唯一信徒共が有利だった部分を自ら潰していく。

 それにより、より悲惨な状況になるのを全く理解もせずに。

 それを見ていたトモルは、頃合いを見て声をかける。



「よーし、そこまで」

 信徒共の耳にトモルの声が届く。

「生き残った者は用意した馬車に乗れ」

 言われて信徒共は気づいた。

 出口に当たる開口部の先に馬車が屯してるのを。

 ただ、それを馬車と呼ぶのには躊躇いはした。

 馬が引いてる車なのだから、確かに馬車ではある。

 しかしそれらは鉄格子で作られている。

 より正確に言うならば、それは護送車と言うべきであった。

 犯罪者を運搬するためのものだ。

「な……」

「嘘だ……」

 うめくように信徒共が声を漏らす。

 それもそうだろう。

 神の、教会の教義に従って行動していた彼等に罪悪感はない。

 自分達に罪があるとはこれっぽっちも思ってない。

 そんな自分達が犯罪者や囚人用の護送車に乗れと言われてるのだ。

 信じられないのも無理はない。

 だが、現実は容赦がない。

「さっさと乗れ。

 嫌ならお前らはここまでだ」

 そう言われて信徒共は従うしかなかった。

 冒険者と戦う気など既に無くなっている。

 戦っても勝てるわけがないのだから。

 嫌でも言う事には従うしかない。

 冒険者との戦闘(と呼べるようなものではなかったが)を終え、仲間同士の殺し合いを経て。

 疲労と徒労にまみれた体を引きずるように、信徒共は護送車へと向かっていこうとした。

 そこに追い打ちがかかる。



「おーい、そこらに転がってるゴミも持っていけ」

 トモルの声に信徒共は足を止め、顔を見合わせた。

「ゴミ?」

「何の事だ?」

「足下にあるだろ」

 トモルの声が疑問に答える。

 言われて目を下に向けた信徒共は絶望感を更に深くした。

 そこにあるのは、今まで仲間だったものである。

 殺し合った相手でもある。

「そんなものを残すな。

 全部馬車に乗せろ。

 捨てていったら迷惑だ」

 言われて信徒共は泣きたくなった。

 神に従い、教会の教えを守ってきた自分達がゴミなのかと。

 しかし逆らう事は出来ない。

 渋々ながら信徒共は、かつて仲間だったものを担ぎ、護送車へと運んでいく。

 それは死体が片付くまで続いていった。



 生死の違いなく信徒共が馬車に乗り込んだところで、トモルは壁を崩して元に戻した。

 戦いがあった痕跡などこれっぽっちも残らない。

 周囲は踏み固められて出来上がった道だけが残った。

 後片付けは終わり、あとは帰るだけになる。

「それじゃ、全員帰るぞ」

 そう言ってトモルは冒険者達に帰還を命じた。

 冒険者達は次々に柊領の方へと向かっていく。

 馬車を残して。

 車に繋いでいた馬も放し、手綱を引いてその場から去っていく。

 それを見た信徒共は驚き慌てた。

「おい、何処に行くんだ」

「うるせえ!」

 怒鳴るような質問の声に、より大きな怒声が返っていく。

「黙ってろ!」

「一々うるせえんだよ!」

 信徒共に答える声はない。

 あるのは苛立ちと怒りと憎しみが籠もった声。

 それを受けて信徒共も口を閉じていく。

 聞いても無駄だと嫌でも悟っていく。

 立ち去っていく冒険者達を見ているしかない。

 それが彼等に悔しさをかきたてていく。

(なんでだ)

(俺達、神に従ってるだろうが)

(こんな扱い、おかしいぞ)

 しかし声に出される事は無い。

 下手な事を言えばどうなるか分からない。

 その事は、今日の戦闘で嫌でも理解させられた。

 自分達が敵に回した連中は、これっぽっちも自分達を顧みないと。

 神や教会に全く尊崇や敬意を払わないと。

 あるのは嫌悪と憎悪だけであると。

 それを肌で感じた彼等は、置き去りにされる事を受け入れるしかなかった。

「……どうすんだよ」

 残された護送車の中で誰かが呟く。

 ここに取り残されてこれからどうなるのかという不安もある。

 だが、彼の感じていた問題はそれだけではない。

 それよりも、同じ護送車に運び込んだ死体の方が問題だった。

 それらと一緒にされてる事への嫌悪感の方が大きい。

 さほど時間を置くことなく、同じ事を他の者達が考えるようになる。

 そこで彼等は初めて自分達が最悪の状況に置かれた事を理解した。



 翌日。

 再びやってきたトモルと冒険者が護送車に馬を繋いでいく。

 それを見て、信徒共は少しだけ胸をなで下ろした。

 このまま自分達は死ぬまで放置されるのだと思っていたからだ。

 だが、トモル達は戻ってきた。

 馬も繋いでどこかに移動しようとしている。

 その事で少しだけ安心する事が出来た。

 信徒共は状況が動いた事で何かが変わると思った。

 それは確かにその通りであった。

 そのまま放置されるという事態にはならずにすんでいる。

 しかし、事態が改善されるかどうかは分からない。

 それでも彼等は、根拠もなく物事が良い方向に進むと思っていた。

 少なくともこれ以上悪くなる事は無いと。

 そんな保証は何一つ無いにもかかわらず。

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