250回目 教会が無いなら、代わりを作れば良いじゃない 2
教会の宗教からの改宗はかなりの難しさを伴う。
人間、簡単に今までの習慣を変えられない……というのもある。
だが、それ以上に大きいのは利害関係である。
教会の宗教から外れるという事は、教会の勢力圏での生活が出来なくなるという事になる。
教会は教徒以外を異端として扱う。
事実上の犯罪者と言える。
法律での処罰対象ではないが、教会が独自に排斥を行う。
信者に異端との接触を禁じるのだ。
これにより商売などが出来なくなる。
直接の暴行を加えてるわけではないが、生活が成り立たなくなる。
異端と認定された瞬間に、食料も日用品も手に入らなくなるのだ。
他の者達との協力や会話も出来なくなる。
これでは日常生活もおくれない。
それが怖くて教会の宗教に所属してる者もいる。
そうなると分かっていてもトモルは改宗を強要した。
問題を起こしてる連中と同じ所に所属してる者などいらないと。
もとより敵対していた連中である。
内部情報をもとに脅迫をしていたのだ。
身内であるわけがない。
そんな連中と同属の者など受け入れる事など出来るわけがない。
当然ながら難色を示す者達もいる。
今までの生活が出来なくなるのだから当然だ。
トモルの領域内で生きていけるならともかく、そうでない者達もいる。
行商人などがその典型だ。
あちこちを巡って商売をしてる彼等からすれば、改宗は受け入れられない。
なので、その対策もしていかねばならなかった。
ここで役立つのが、あちこちの貴族から受け入れた子弟である。
彼等を通じて、各地の領主などに働きかけ、改宗をするよう迫った。
教会によって煮え湯を飲まされてる者達もおり、改宗には前向きだった。
それでもすぐに改宗に踏ん切る事は出来なかった。
やはり教会の影響力は大きく、それをすぐに取り払う事は出来ない。
しかし、トモルが誘ったあらゆる所が教会を排除すれば、それなりの勢力になる。
それらが手を取り合えば、教会なしでもやっていける。
また、各地の領主が交流のある所に話をもちかければ、更に勢力は拡大する。
連鎖的にこれが進んでいけば、独自の勢力を構築する事も可能だった。
これには、各地にいる冷や飯食いを受け入れていたのが大きく作用した。
部屋住みになる予定だった子弟の勤め先があるのは大きい。
それを失いたくない者達もいる。
それは貴族だけに限らない。
一般庶民・平民だって同じだ。
自立・独立の可能性がある場所があるのだから、そこを目指すのは当然である。
トモルの領域は、モンスターの領域への進出を開始している。
危険ではあるが、それは自分の土地を手に入れる絶好の機会であった。
様々な階層の者達がそこを目指すのは当然である。
それを捨てる事など出来るわけがなかった。




