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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第7章

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242回目 どんな言い訳をしようと問題から目を背けるのが悪い 2

 行商人の娘であるエリカ。

 トモルの子供の頃に、モンスターを倒してるところを目撃した娘。

 以来、トモルはその事を他言しないよう口を封じてきた。

 同時に馴染みとなってる行商人である父親を確保するために側仕えをさせていた。

 馴染みはと言えば馴染んだ顔である。

 しかし。

 決して良い関係とは言えなかった。



(しょうがないけど)

 最初の出会いが酷すぎた。

 何もしらないエリカがトモルの後をついてきた。

 それでモンスターを倒してるところを発見された。

 外に漏れるのも面倒なので、口外しないように脅しをかけたのだが。



 それが尾を引いている。

 トモルへの恐怖を抱くようになっていた。

 それも仕方ないとは思う。

 しかし、トモルとしては外に言いふらされるわけにはいかなかった。

 まだ自分の能力がどの程度なのか分からなかった頃である。

 やってる事が外に漏れるのは避けたかった。



 それに、相手が言うことを素直に聞いてくれるのかも分からなかった。

 なまじ優しくすればつけあがる可能性もあった。

 何より、その時のトモルはエリカに憤りを抱きもしていた。

 余計な好奇心を抱いてついてきたせいで目撃されたのだから。



 正直なところ、エリカを放置して捨ててしまおうかとすら思ってもいた。

 実行にうつさなかったのは、それこそ下手な温情を抱いてしまったからである。



(失敗したな……)

 今にしてそう思う。

 あの時、エリカの事など放置して捨ておけば良かったと。



 冷酷と言われればそれまでであろう。

 だが、現在の問題を考えるとそうも言ってられない。

 口を滑らせないように近くに置いて監視をしていたのだが。

 やはり上手くはいかなかった。

 それとなく動きを見ていたのだが、看過する事が出来ない事が起こってしまった。

 さすがにこれ以上放置は出来ない。



(ここらが限界か)

 行商人との繋がりを維持しておくためにも、エリカは側においておきたかった。

 だが、それももう諦めるしかなさそうだった。

(たれこんだりしなければ)

 つくづく残念である。



 エリカがやってるのは、教会での懺悔である。

 誰にも言えない事を教会の坊主に聞いてもらっている。

 それによって気分を楽にしたり、神の許しを得るのだ。

 実際には神などいないし、告白したところでやらかした悪事が消えるわけではない。

 やってる事はただの気休めでしかない。



 だが、秘密を抱えておくというのは、人間には難しい。

 平然としていられる者もいるが、そうでない者の方が多い。

 そんな者達にとっては、問題無く胸の内を吐露できる場所が必要になる。

 教会はそこに目を付け、様々な問題のはけ口になっている。



 そうする事で、胸のつかえをとっていく。

 根本的な解決にはならないが、気休めにはる。

 この世界においては、これにすがる者はさほど珍しくはない。

 教会の役目として、こういった事は広く知られて受け入れられている。



 なお、教会がこんな事をやってるのは、慈善のためではない。

 これを業務として行う事で、相手の弱みを握るためである。

 実際、弱みを握られた人間は教会の言いなりになる。

 そうでなくても、苦しい胸のうちを聞いてくれた者として信頼を得る事もある。

 それは共犯者としての連帯感に近いものではあろう。

 だが、教会としては協力者が増える事は利益になる。



 そうやって教会は様々な情報を集め、様々なところに手を伸ばしている。

 王侯貴族を始めとした有力者に影響力を持つ。

 何せ各階層に存在する者達がスパイとして情報をもたらしてくれるのだ。

 弱みを握って意のままに操るなど簡単である。

 エリカもそうした情報源の一つになっていた。



 内部情報の流出である。

 トモルとしてはこれ以上面倒な事はない。

 いずれは公表するにしても、時期が来るまでは秘密にしておきたい事もある。

 それが相手に弱みとして握られるのである。

 これほど辛い事は無い。



 人は懺悔を通して、知らず知らずこれを行なっている。

 これを利用して教会は己の勢力を拡げている。

 王侯貴族やその他の有力者にとって、これほど鬱陶しい存在はない。

 宗教とは、国境のない国家と言えるほどの勢力になっていた。

 直接的な介入手段はさほど持ち合わせていない。

 しかし、民衆に浸透し、様々な影響力を行使する事が出来る。



 また、教会施設を守るための警備兵も置いている。

 それらをまとめあげれば、立派な武装集団にもなる。

 それらがすぐそばにいてうごめいてるのだ。

 これほど面倒な事はない。



 トモルにとってもそれは同じであった。

 人の救済をうたい文句にしながらも、その実は鬱陶しい抵抗組織でしかない。

 いや、抵抗などと言うなまやさしいものではない。

 反逆者の集いと言ってもよい。



 少なくともトモルにとって宗教とはそういうものであった。

 果てしなく邪魔な存在である。

 そんな所に、エリカは懺悔をしに行っている。

 トモルにとって最悪の状況であった。



 目立って問題はまだ起こってない。

 だが、いずれ面倒に発展していく。

 それが目に見えてるからこそ、どうしたものかと考えてしまう。

 今までであればそうだっただろう。

 だが、それも変わりつつある。



(もう良いのかもな)

 かつては己の力量が分からなかったから慎重になっていた。

 下手に情報をながさないよう隠していた。

 しかし。

 今のトモルはかつてとは比べものにならない実力を身につけている。

 それを隠す必要性も薄れている。



 国を相手に戦うほどの力はまだ無い(とトモル自身は思ってる)。

 だが、それでも相当な力を持ってるのも確かである。

 ただ、国そのものを相手にするほどの力が無いだけで。

 それがトモルにとっての気がかりであった。

 なのだが。



(これ以上我慢してるのもなあ……)

 それがそろそろ鬱陶しくなってもいた。

 出来ればもう少し成長するまで大人しくしていたかったのだが。

 現状がそれを許してくれそうもない。

(まあ、やれるだけやってみるか)

 そう思うトモルは、色々なものを吹っ切っていく。

 開き直ってるとも言う。

 呼び方はどちらでも構わなかった。



 この瞬間、トモルは重苦しい悩みから解放されたのだから。

 爽快になっていく気分に比べれば、考えねばならないその他諸々などどうでも良かった。

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