238回目 ラブロマンスなんて気の利いたものじゃありません 7
同じ村にいるから問題が発生する。
ならば、村から引き離せば良い。
単純な事だが、それが出来れば問題は発生しない。
少なくとも、村の者達とのいさかいは回避出来る。
今回の場合、サエの家族全員をトモルの方で引き受けてしまえば良い。
これなら、人間関係の問題を回避出来る。
解決にはなってないが、面倒な問題を発生させにくくはなる。
(問題は何をさせるかだな)
これが一番の問題である。
トモルが抱えるにしても、何もさせずに遊ばせておくわけにはいかない。
さすがにそこまでの余裕は無いので、サエの家族には何らかの仕事をしてもらう事になる。
食い扶持くらいは自分達で何とかしてもらわないとやってられない。
なのだが、そんな簡単に仕事を与えられるわけもない。
用意出来る職場がそもそも少ない。
今回の問題、あくまでトモルが解決せねばならない事である。
なので、親である領主に頼んで柊領の仕事をさせるというわけにもいかない。
ある程度の助力はしてもらえるだろうが、基本的にトモルが解決する事になる。
無理や無茶を言ってるのだから、その解決くらいは当事者が行うべきである。
それは言い出した者の責任というものだ。
なので、仕事を回すにしても柊領の中で、それもトモルの裁量でどうにかなる範囲となる。
全てはトモルの権能の及ぶ範囲で片付ける事になる。
そうなると、与えられる仕事が限られてしまう。
仕事が無いのではない。
サエの家族に出来る仕事があるかどうかが問題なのだ。
出来たばかりの小さな出張所なので、そもそも仕事が少ない。
開店休業とまではいかないが、それ程大人数が必要というわけではない。
いや、頭数は必要だが、それでも全くの未経験者を抱えてる余裕は無い。
未経験というより、教養の問題になってくる。
出張所とはいえ、まがりなりにも役所である。
それなりの知識をもってないと仕事が出来ない。
現代日本に当てはめて言うならば、だいたい中学校卒業程度の学力は欲しい。
なのだが、この程度の学力を持ってる一般庶民はほとんどいない。
寺子屋のような教育はあるにはあるが、あくまで読み書きと計算が出来る程度。
単純な比較は出来ないが、せいぜい小学校の範囲でしかない。
この世界の一般人が受ける教育とはこの程度である。
それ以上の学問はいらないと考えられている。
実際、より高度な知識や学問が必要になる事はほとんどない。
あとは家で仕事に関わる知識や技術を教えられるくらいだ。
なので、出張所の仕事を任せるわけにもいかない。
教育すれば良いだけではあるのだが、その為に時間を割くのも大変である。
言ってみれば創業期である。
ある程度の知識や経験のある者がいないと仕事が回らない。
未経験者を教育して戦力にしていく余裕は、まだまだ無い。
そこにいきなりサエの家族を放り込んでも、作業現場が混乱するだけだ。
(そこを何とかしないとまずいよな)
何とかしてここを解決しないといけない。
でないと、無理してサエまで囲おうとしてる努力が無駄になる。
出張所でも任せられる仕事を何とかして探さないといけない。
あるいは、何かしら仕事を作らないといけない。
もちろん、無駄になるような形だけの役職を作るわけではない。
ちゃんと必要になるものをトモルの方で用意する必要がある。
(となると……)
考えがないわけではない。
だが、それが必要になるのはもっと先だと考えていた。
まだ準備はほとんどととのっていない。
しかし、そう悠長な事も言ってられなくなってきた。
(丁度良い機会と思うしかないな)
いずれやるつもりだった事である。
時期をいつにするかを悩んではいた。
それが今この時だったのだろうと思う事にした。
想定していた以上に早い時期になりはしたが。
誤字脱字、この後書きを書き込んでる時点までに報告のあった部分は訂正済み




