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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第7章

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237回目 ラブロマンスなんて気の利いたものじゃありません 6

 サナエの承諾が得られたといっても、それで全てが終わるわけではない。

 まだサエの説得が残っている。

 どちらかと言えばこちらの方が難しいかもしれない。



 地位からすれば、トモルの方が貴族で命令を出す方ではある。

 支配者であるので、支配地域内では絶対の権限がある。

 実態はともかく建前ではそうなっている。



 もっとも、これはあくまで統治に必要だから得られている特権である。

 命令という強制は、領地の発展の為に必要だから与えられている。

 不用意に領民を虐げたり、収奪をする為ではない。

 そんな事をすれば、王家を始めとした支配体制がやらかした者を始末する。



 実際には貴族の勢力争いのためにこの権限が発動する事は少ないのだが。

 それでも、無理強いは決して許されない。

 ほとんど死文と化している条項だが、これは王家の権限としてしっかり記されていた。



 王家からすれば、それが小さな範囲だとしても、領民が不当に虐げられれば国力の低下になる。

 また、小さな問題が拡大して大きな反乱などに発展したらたまらない。

 これを危惧するために、王家は各貴族に不当な行為を慎むよう睨みをきかせている。



 また、こういった制限や制約がなくても、不当に領民を扱う事は出来ない。

 まともな領地運営をしたければ、そこに住んでる領民をそれなりに扱わねばならない。

 でなければ収穫も得られず、経済基盤を失う事になる。



 農産物にしろ、工業製品にしろ、商業活動にしろ、それらから税収を得て生活するのが貴族である。

 民を虐げれば最終的に貴族の生活が成り立たなくなる。

 このため、まともな貴族ならば民を虐げるような行為は自重する。

 何せ貴族より民の方が数が多い。



 それらが一斉蜂起したら、末端の小さな領主など簡単に殲滅されてしまう。

 そこまで行かないにしても、不満を抱いた者達が領地から逃げ出す事なんて珍しくもない。

 蛇足だが、こういった逃散をする民の行き着く先が冒険者であったりもする。



 生まれた場所で人生を終えるのが、この世界では基本である。

 そうでなければ生きていけないくらいに仕事がない。

 一部の例外はともかく、基本的に仕事は全て家業であり、一家で全てを賄う。



 手が足りない時には助けを呼ぶこともあるが、それも隣近所を優先する。

 なので村の外から人を集めるという事は、普通の村ではまず発生しない。

 余所者が田畑を手に入れるなんて夢のまた夢だ。



 ある程度以上の規模の町であっても例外ではない。

 職人や商店などはそこの主や店員の家族で埋まっている。

 いわゆる縁故で固まっており、それ以外の者が正規に採用される事はほとんどない。

 丁稚奉公の者達が実働部分を担うが、経営に関わる中枢部分に採用される事はほとんどない。



 つまり、町でもあるのは単純労働などに限られる。

 生活はできるが、食っていくだけで精一杯の待遇がほとんどだ。

 多少なりとも稼げる可能性があるのは、冒険者だけとなってしまう。



 今回、トモルがやろうとしている事は、こんな事を考えるほど酷いものではない。

 サエの家からすれば目出度い出来事と言えるだろう。

 一応、玉の輿と言える部類にはなる。

 だが、それでもやはり地位や身分というのは付きまとう。



 これが庄屋や豪農、村長などの家であるならばさして問題は無い。

 地位や身分の釣り合いが取れる。

 だが、サエの家はただの村人でしかない。

 そんな家の者が貴族に嫁入りとなると、村の中でのやっかみが発生する。



 これの何が問題かというと、村の中での力関係が崩れる事にある。

 大半の人間は、立場が横並びで同じようなものであるからそれなりに仲良くしている。

 実態はともかく、名目上全員が同じ立場だ。

 だからこそ、対等の立場で接していられる。



 こんな所で少しでも突出しようものなら、途端に嫉妬の対象となる。

 自分達と同じ所から抜け出した者達を酷く嫌う。

 上手くやりやがって────そう思う者が出てくる。



 出てくるというか、ほぼ全員がそう思う。

 そうなると、必然的に村の中で除け者扱いされてしまう。

 貴族の身内になった者達をあからさまに攻撃する事はさすがにない。



 だが、接触を断つ事で孤立させようとする。

 狭い村の中で、協力が得られなくなる。

 それは死活問題になりかねない事であった。



 人間は自分よりよい立場や状況にいる者を羨む。

 そして、妬みや嫉みをもよおす。

 自分より上にいる者を許せないと思う。

 例外もいるが、例外は常に少数派である。



 まして、同じような境遇の者が上に出ようとすると、それだけで憤りを感じる。

 なまじ同じ立場だったからこそ、そこから抜け出して自分達に差を付けるものを許せないのかもしれない。

 そうなった者に向ける見苦しい嫉妬や憤りが、どんな形で出てくるかわからない。



 更に言えば、あからさまな攻撃がないだけで、見えない所での攻撃は発生する。

 その陰湿さは貴族の陰謀と本質的に何の違いもないかもしれない。

 そこにいるのが人間である以上、やる事に違いはないのかもしれない。

 地位や立場の違いがあってもだ。



 なので、サエを側におくというのもなかなか難しい。

 家族の事も考えてやらないといけない。

 サエだけを手に入れる事を考えるなら、こんな事は無視しても良いのだが。

 しかし、さすがにトモルもそんな事をしたいとは思ってない。

 自分の身内に加える事でいらぬ問題が発生するのは極力避けたかった。



(こっちで抱えるしかないか)

 解決手段はそれしか思いつかなかった。

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