221回目 裏側というかもう一方の動きという、陰謀めいた何か 5
「それが、結構広範囲に広まってるようでして」
「ほう?」
「この近隣だけかと思ったのですが、どういうわけか町を越えて都まで及んでまして。
更にそこから首都にまで次々と伝播してるようです」
「そいつは……妙だな」
「ええ。
勝手に拡がっていくのが噂というものですが、これはあまりにも拡散しすぎです」
報告をしてる方もこの事象を不思議がっている。
話を聞いてるトモルは、それを超えて明確に何らかの意図を感じていた。
「敵がいるな」
その言葉に、居合わせた者達はぎょっとする。
「敵……ですか?」
「ああ、敵だ。
意図的に悪評を言いふらしている連中がいる。
でなければ、こんな短期間でこれだけひろがるわけがない」
断言するトモル。
その声に、居合わせた者達は顔を強ばらせていく。
さすがにその可能性を考えてはいなかったからだ。
常にどこかで発生する柊領の悪評。
執念深さを感じるその態度に、トモルは明確な敵がいることを考えていた。
確証はない。
だが、そうでもなければ頑なに悪評を立てる理由が説明出来ない。
何を理由にしてそんな事をしてるのかは分からない。
だが、悪評を繰り返す者は確かにいる。
何時までもそんな事を繰り返す存在は、何らかの意図を持ってるとしか思えなかった。
(敵だな)
これが味方ならば、悪評などたてるわけがない。
そんな事をしても利点がないからだ。
わざわざ嘘を吐いてまで悪評をたてるのは、敵としか言いようがなかった。
(けど、何で?)
そうする理由についてはさすがに分からない。
いくつかの理由は想像出来るのだが。
正解が何かは分からない。
何より、相手がどこの誰なのか分からないから、答え合わせが出来ない。
(さすがにそろそろ次の手段にうつるしかないか)
これ以上無駄な事を繰り返すのも面倒になってきている。
性急すぎるかもしれないが、更なる対抗手段に着手する事も考えていく。
(そろそろ情報も集まってきてるし)
悪評に対抗する為に好評を流し続けてる中で、ある程度の調査も進めていた。
おかげで誰が中心になって行動してるのかも判明してきている。
それらと話し合う事でなんらかの情報が得られる可能性はあった。
(多少手荒になるかもなあ)
相手の態度にもよるが、聞き出す手段を選ぶつもりは無かった。
最悪、魔術を使ってでも相手から情報を引きずり出すつもりである。
攻撃を仕掛けてる連中の正体をつきとめる為である。
そういった者が本当にいるなら、少しでも早く突き止めねばならない。
たとえ黒幕がいない、単に面白半分にやってるだけだとしても、容赦をするつもりはない。
むしろ、その方がよっぽど質が悪いとも言える。
何の理由もなく、ただ自分の楽しみのためだけに他人を貶めてるのだから。
そんな者を許す理由をトモルは何一つ見いだす事は出来ない。
そして。
最悪の事態として、もし本当に何らかの意図で悪評を流してる者がいたならば。
それとの対決を覚悟せねばならない事になる。
その場合、厄介な事になる可能性が非常に高い。
まがりなりにも統治者の一角に喧嘩をふっかけてるのだ。
相当な覚悟と能力、そして組織力などを持ってる相手である可能性がある。
最終的に勝つにしても、長く苦しい戦いになる事が予想された。
そして、そんな事が出来るような相手となると相当に限られてくる。
思いつくものを並べていくだけでも気が滅入る程だ。
(まったく……)
本当に鬱陶しく、そして面倒な話である。




