218回目 裏側というかもう一方の動きという、陰謀めいた何か 2
異変が顕著に表れだしたのは、トモルが学校を卒業して一年が経つ頃だった。
冒険者の流入によって領地が拡大し、それに応じた体制作りが多少は軌道に乗った後である。
冒険者は更に増え、それに合わせて行商人や職人も多くなった。
モンスターも周囲から減り、田畑の拡大も始まってきていた。
そうして増えた田畑からの収穫の多くは、近所にいる冒険者の所に向かう。
これが農家の収入を増やす事にもなった。
おそろしい事に、これだけでは消費に供給が追いつかない。
このため、柊領の周辺の農村からの食料流入も起こってる。
これが、局所的に経済を活性化させている。
領主としての機能も拡大していた。
部屋住みの貴族子弟の取り込みは、その後も順調に進んでいる。
そのほとんどは下級役人の扱いであるが、それを嫌がる者はいない。
部屋住みから脱出するための、貴重な就労先である。
食い扶持のない貴族子弟からすれば垂涎の的であった。
しかもその採用はまだまだ終わってない。
柊領はまだ拡大を終えていない。
役所の機能もまだまだ拡大せねばならない。
貴族子弟の採用は少しずつであるが続き、それだけに注目が続く状態にあった。
そんなこんなで柊領は、近隣の中心地になりつつあった。
それ自体は慶賀すべき事である。
だが、そんな状況だからこそ問題も発生するようになる。
その気配をトモルは感じていた。
(あちこちの人間が紛れ込んできてるな)
そう感じるようになったのはいつの頃からだったか。
単に行商人や流れの職人が居着いてるのとは違う。
どこかの勢力に属してる人間が行き来するようになってる。
確かにそれらのほとんどは商売や製造を行ってる。
本業としてそれらを行なってるのは確かだ。
しかし、同時に仕事を通じて様々な情報を他の場所にもたらしもしていた。
やってる事は間者やスパイと似たようなものである。
それらも仕事柄仕方ないという面もある。
儲け話を持ち寄るのは珍しい事ではない。
お得意さんにあれこれと情報をもたらすのも自然な事ではある。
だが、そうとばかりも言えない気配を何となく感じてもいた。
柊領に出入りする者達が、自分の商売や仕事に関わる範囲で外で話をするのは仕方ない。
だが、それとは別に何らかの意図をもって柊領の情報を持ち帰るものがいる。
(何を考えてる?)
急速にトモルは警戒心を高めていった。




