213回目 実家のお仕事 4
冒険者と共に行動させてレベルアップをはかる。
この提案を、父は意外とあっさりと受け入れた。
そういう事も必要だろうと父も考えてはいたようであった。
ただ、それをどうやってやるのかを悩んでいた。
「依頼するとなると金が必要だからな」
冒険者への依頼となれば当然金がかかる、
それなりの費用がどうしても必要だ。
だが、それだけの金を出せるかどうかというと、それは悩ましいものがある。
まして目的がレベルアップだ。
相当長い期間戦闘をしなくてはならない。
それだけの時間、冒険者を雇えるかというと、それはさすがに無理である。
金回りが良くなったとはいえ、柊家にそこまでの余裕は無い。
だが、トモルはそれについても問題無いと考えていた。
さすがにそれを父に直接言うわけにはいかなかったが。
冒険者を束ねてるという事は、今も秘密にしてるのだから。
いずればらすにしても、まだその時ではないと思っていた。
「とりあえず、冒険者に話してみたらどうでしょう。
駄目でもともとなんですし」
そう言って父を促す。
「今すぐ出来なくても、打診しておけばこれからの為にもなるかもしれませんし」
いきなり声をかけるよりは良いだろうというのはどこの世界でも同じである。
根回しというのは無いよりはあった方が便利ではある。
裏工作が蔓延るという問題もあるが、今はそんなことを気にする必要も無い。
まずは反応を確かめない事にはどうしようもないのだから。
もちろんの事、こんな根回しなどする必要がない。
トモルが率いてる集団である。
声をかければ簡単に応じる。
冒険者として依頼には報酬を求めるが、それとて融通をきかせられる。
金銭の報酬を控えるかわりに、便宜を求めていけば良い。
単純なところでは宿泊場所や食料など。
これらを提供してくれれば、その分報酬を下げてもよいとする。
武器や防具の整備なども加えていく。
また、税金の減免などもしてくれれば申し分ない。
稼ぎが少なくても、差し引かれる税金が少なければ手取りは増える。
冒険者側からの提案という事でトモルは、柊家からの申し出に応じていく。
「なかなか考えてるな」
冒険者からの返事を聞いたトモルの父は意外そうな顔をした。
単純に金銭だけではなく、優遇措置を求めてきたからだ。
そこまで頭がまわる者は、平民庶民ではなかなかいない。
権謀に長けた貴族や目端の利いた商人ならばともかく。
そういった駆け引きも考えず、単純に金銭だけ求めるのが一般的な平民庶民というものである。
「冒険者というのもなかなか侮れないな」
多少は冒険者への考え方をあらため、柊家の当主はこの申し出について考えていく。
全部は無理だが、受け入れられる部分は承諾していく事にする。
その分の出費を金銭以外でしていく事にもなるが。
しかし、長い目で見れば安上がりになるものも出てくる。
(悪くはないか……)
いくつかは妥協してもらいたいものもあるので、そこは交渉していく事になる。
だが、それでも大幅な見直しは必要がない。
領主として納得が出来る範囲の事がほとんどである。
後日、柊家と冒険者の間で契約が成立する。
これにより柊家の者が冒険者と共にモンスターとの戦いに挑んでいく事になった。




