212回目 実家のお仕事 3
「そういうのも必要だろうな」
トモルの提案に父はあっさりと賛同した。
同時に早急に出来ない理由も口にした。
「だが、人がな」
それが問題だった。
必要なのは分かってるが人材がいない。
領主の下で様々な処理をする人間はいるが、一つの部署を任せる事が出来るような人間がいない。
特に監視を兼ねた警備所となると、領主の館から離れた所に設置する事になる。
そうした完全に独立した部署を担う事が出来るだけの人間はいなかった。
「この数年で人は増えたんだけどな」
だが、数年である。
それだけの時間で部署を一つ預かれる人間を育てる事は難しい。
余程の才能がなければ無理であろう。
まして増えた人間の大半は若者がほとんどだ。
幾らか年齢が高い者もいるが、それにしたって実務経験年数は変わらない。
そんな人間に曲者揃いの冒険者の相手が出来るかどうか。
「そういう問題もあるんですね」
「ああ。
早くてもあと数年は時間が必要だ」
実務能力も大事だが、人間性を練る必要もある。
その為の時間も必要だった。
「何より、レベルを上げないといかんからな」
「それは確かに……」
それも重要だった。
戦闘を生業とする冒険者のこと、それを取り締まれる強さも必要になる。
となればレベルアップが必要になる。
なのだが、そう簡単にできるものでもない。
「モンスター退治をさせればいいんだろうが」
「そこまで余裕が無いんですね」
「そういう事だ。
兵士や警備の人間までは手も回ってないしな」
そちらを担う人間まで確保出来てないようである。
事務処理の方が増えたから、そちらを優先したためである。
現時点での収入では、それだけの人間しか抱えられなかったというのもある。
「これから警備の人間も増やしていくが、警備所を作るのはまだ先だな」
それが父の出した結論だった。
(けど、人が育てられれば問題はないんだな)
それも確かな話である。
とりあえず、今居る兵士などだけでもどうにかなれば、とも思った。
それも、柊家の抱える者達だけでも。
もともとここは辺境である。
目の前にはモンスターが蔓延る無人地帯がひろがっている。
それらへの対処のために、通常の貴族よりは多めの兵士などを抱えている。
とはいっても、他より一人か二人多いという程度だが。
当然これだけでは足りないので、王国直属の兵士も駐留している。
ただし、これらは柊家の家臣や家来というわけではない。
なので指揮系統や命令権などは柊家にはない。
何かあった場合は出動を要請するという形で柊家に協力する事はあるが。
さすがにそれぞれが別々に行動していたら効率が悪い。
その逆に駐留してる兵士達の指揮官が柊家に協力を要請するという事もある。
どちらにろ、何らかの行動をとる場合は一つになって行動する事が多い。
とはいえ、それでも基本的には所属が別なので、同一視する事は出来ない。
あくまでこれらはモンスター対策の為の駐屯兵である。
柊領の為に動かすわけにはいかないし、動いてくれるわけもなかった。
大事なのは柊家の家来のレベルアップである。
それが出来れば問題は無い。
(なら、冒険者と一緒にモンスターを倒しに出かけさせるか)
強化魔術をかけてモンスターの巣に放り込めばどうにかなりそうではある。
(これも提案してみるか)
冒険者への依頼という事でどうにかなればと思った。




