201回目 問題の解決とその後
タケジの家の火事によって、柊家も村も慌ただしい。
しかし、村の者達はそれだけを考えてるわけにもいかない。
火災現場の検分が終われば、後始末はしなくてはならない。
事件に関わるのはそこまでだ。
それが終われば村の仕事に戻っていく事になる。
種まきの時期がやってきてるので、他の事に時間を割いてるわけにはいかないのだ。
それに、煙たがられていた連中が消えたのだ。
そんな連中のために気を揉むのも馬鹿馬鹿しい。
原因が不明なのは気になりはしたが、それでも悪い結果になってるわけではない。
むしろ僥倖とすら言える快挙に喜んでいる。
燃え尽きた屋敷とそこに住んでいた邪魔者村長一家。
その存在は、死亡を喜ばれるくらいには村の者達の負担であった。
村人達はそれらから解き放たれたのだ。
誰もが穏やかな表情を浮かべながら、これからの作業に向かっている。
とはいえ、領主ともなるとそうはいかない。
起こった火事とそれによって出てしまった死人。
それも一家全滅ともなれば、それなりの仕事をしないといけない。
火災現場の検分と保存、事故当時の状況の調査。
これらを出来るだけ調べて、正規の役人に報告しなくてはならない。
もちろん、領主と言っても専門家ではない。
事故や火災の原因の究明など出来るわけもない。
やれる事と言えば、火災現場に誰も立ち入れないようにする事と、証言を集める事くらいだ。
それだけでもやっておかないと、管理責任を問われる。
事故や災害が起こった事についての糾弾というわけではない。
さすがにそれは領主の責任でも何でもない。
領主として求められるのは、起こった出来事への適切な対処である。
今回の場合、出来る限り詳細な情報の聴取などがこれにあたる。
それを柊家の当主は過不足なく行わねばならなかった。
火災現場の調査などは、国家や地方の役人によって行われる。
当然ながら、これらは専門家によってなされる。
今回の場合、火災担当の役人がやってきて、現場を調べる事になる。
可能であるならば死体の検分もしていく。
それにより、何が原因なのかを突き止めるためだ。
これが火の始末を怠ったり、何らかの自然現象であるならば問題は無い。
だが、放火によるものならば、その犯人をさがさねばならない。
その為に、火災の発生現場に調査官が派遣される。
とはいえ、科学がそれほど発展してない世界である。
調査といっても、それほど細かくなされるわけではない。
特に平民庶民が被害者の場合、形だけで終わる事がほとんどだ。
今回は村長という、一応それなりの地位の者が被害者だ。
多少は詳しく調査はするかもしれない。
しかし、それでも貴族というわけではない。
地元の名士という程でもないので、ほんの少し詳しく調査するだけである。
火災現場を見て、死体を検分してそれで終わる。
それも、ほとんど見るだけで終わる。
現場の見取り図は作るかもしれないし、死体の状態を書き留めるかもしれない。
だが、それだけだ。
それらに異常はないか、不可解なところはないかと検証したりはしない。
あくまで、記録だけが目的で終わっていく。
それが通例であった。
誤字報告、助かってます。
活動報告でも書いたけど、ここでも一言。
それと、こちらの更新は落とします。




