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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第1章

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20回目 下手に探りをいれるような事をしないのも、大人の智慧なのでしょう 4

 いないいないと思っていると、なぜか大量発生する。

 その逆も場合も含めて、そういった事態に遭遇する事はままある。

 今のトモルはまさにそれだった。

「……嘘だろ」

 ぼやくも、それで状況が改善するわけでも解決するわけでもない。

 迫ってくるモンスターは、着実にトモル達を包囲し、接近してくる。



 やってくるのは、おそらくバッタであろう。

 この近隣だとだいたいそんなものくらいしか出てこない。

 それに、大量に発生するというのもある意味特徴的である。

 モンスターのネズミや、小鬼と呼ばれる人型モンスターも大量発生するが、それらはこの近隣ではあまり見ない。



 また、繁殖力からして、どちらかというとモンスターのバッタの方が頻繁に数を増やしやすい。

 最近は大分おさまっていたと思ったのだが、どこかで大量発生していたのかもしれない。

 それらが今になってこの近隣に顔を出してきたのだろうか?

(まあ、原因究明は後だ、あと)

 頭を切り換える。



 今は目の前(という程ではないが)に迫ってる大量のバッタが大事である。

 どうにかしてそれらを撃退、それがかなわなくてもここから脱出しなくてはならない。

 その為に何をどうしていくかを考えていかねばならない。



(武器で攻撃……は無理だな)

 何体かは倒せるだろうが、数が多すぎてすぐにやられてしまう。

 年齢の割にトモルは優秀な方ではあるかもしれないが、それでも周囲を満遍なく覆うような数を相手にする事は出来ない。

 極端な能力差がなければ、数の暴力というのは質の差を大きく埋める。

 今の状態がまさにこれだった。

 トモルとバッタの能力差は大きいが、圧倒的な数を覆す程ではない。



(魔術を使って……でもなあ)

 それも効果が疑わしい。

 確かに閃光を連発すれば、多少は動きを止める事も出来るだろう。

 しかし、それで相手の目を封じても、いずれは回復する。

 それまでの間に手にした武器で倒していくにしても、数が多すぎて手が回らない。

 先日、行商人を襲っていた時より多いので、どれだけそれが有効なのかはかりかねた。



(何かないか、もっと上手くやれる何かが)

 今の自分に出来る事を考えていく。

 手持ちの方法で何がどれだけ出来るのか。

(まず何だ、何がある)

 残り少ない時間で頭を働かせていく。



 自分が使える攻撃手段、通常攻撃と魔術の二つから考える。

 使う事が出来る魔術は、基本魔術・探知魔術・治療魔術の三つ。

 このうち後者二つは攻撃に使えるものではないので除外する。

 応用すればどうにかなるかもしれないが、そんな方法はすぐに思いつかないので、これも却下。

 なので、戦闘に用いる事が出来るのは通常攻撃と基本魔術。

 まずはこれが基本になる。



 ただ、それでもやはり万能というわけにはいかない。

 通常攻撃は、敵が接近してきた場合と、数が一匹二匹ならともかく、こんな乱戦状態ではどうにもならない。

 全く必要無いとは言わないが、大量の敵を相手に用いる事は難しい。

 達人ならともかく、まだそこまで到達してないトモルには荷が重い。

 これも既に分かっている。

 もちろん手段の一つとして用いるが、これだけというわけにはいかない。



 となると、あとは基本魔術になる。

 これなら、威力も攻撃範囲もそこそこある。

 数多くの敵を相手にするなら、おそらくこれが最善の選択だろう。

 モンスターの核も持てるだけ持ってきてるので、当面の使用には困らない。

 敵の数も多いので無くなる可能性もあるが、その場合は倒したモンスターから奪えばよい。

 さすがにこれは最悪の場合の非常手段だが、出来ないわけではない。



 やれる可能性はあるにはある。

 かなり低いものだろうが。

 だが、これらも用い方を間違うわけにはいかない。

 魔術は強力だが、やはり万能ではない。

 使い勝手というものが当然ながらある。



 まず、水と風は直接的な戦闘力は期待出来ない。

 水は高圧でぶつければそれなりの威力だが、今のレベルではそこまでの圧力で叩きつける事が出来ない。

 範囲を絞れば問題ないだろうが、広範囲に分布する敵にはそれでは意味が無い。

 押し流すことは出来るだろうが、これもそれほど効果を期待出来るものではない。

 一旦は遠ざける事が出来ても、戻ってきてしまえばそれで終わりである。



 風も同様で、飛び跳ねるバッタをある程度吹き飛ばすだろうが、こう数が多いとどうにもならない。

 土は、バッタの足下を崩す事は出来るだろうが、飛び跳ねるバッタに効果は薄い。

 火は効果があるだろうが、草むらの中で使えば周囲への延焼は免れない。



(どうするよ)

 あらためて考えてみると、どれも何かが欠けている状態だった。

 あるいは、必要のない部分が余計に付け加えられている。

 威力も範囲も通常攻撃よりは有利だが、どうにも使い勝手が悪い。

 だが、そう思ったところで少し考えを変える。

 それ一つだけでは効果は薄いか過剰である。

 だが、適度にそれらを組み合わせていけば、どうにかなるかもしれない。

 そう思ったトモルは、まず何をどうするのかを考えていく。



(落ち着け、落ち着け)

 そう思ってる間にバッタが姿をあらわす。

 それらは、羽を広げ、脚で地面を蹴って飛びかかってきた。



 すぐそこまで迫ったバッタに、時間稼ぎの閃光をぶつけて時間を稼ぐ。

 のたうちまわるバッタは、あらぬ方向に飛んでいき、着地を失敗してのたうちまわる。

 そんな光景があちこちで発生していった。

 だが、やはり時間稼ぎにしかならぬのか、起き上がり周囲を見渡すと再びトモルの方に飛んでくる。

 それらを見渡しながら、更に頭を使って考えていく。



 基本魔術による自然現象への介入。

 それらを組み合わせて、何をどのようにしていくかを考えていく。

 相手を倒す為に、せめて相手の動きを封じられるように。

 倒れたバッタの頭に鉈や斧を振りおろし、核の予備を作りながら周囲を見る。

 頭の中で試行した方法を現実に出来るのかを考える。

 少しずつ形になっていくそれは、おそらくトモルが使える最善の手段だと思えてきた。



(上手くいくか?)

 それは分からない。

 確証は全く無い。

 だが、何もしないでいるわけにもいかない。

(やるか)

 腹をくくって行動に移していく。



 その下準備として閃光を連続して発生させる。

 一時的であっても良いから、とにかくバッタの動きを止めていった。

 それから光だけ放っていた基本魔術の使い方を少し変えていく。

 その最初の一つを放ち、手近な地面の土を吹き飛ばす。

 トモルの魔術により、周囲の地面が次々と草ごと弾きとんでいった。



 トモルの近くにいた行商人の娘は、まぶた越しの閃光が落ち着いたのを見て、かすかに目を開いた。

 何の警告もなく放たれたトモルの閃光は、バッタもろとも彼女の視界を奪っていった。

 目から直接脳を突いたまぶしさにうずくまったほどだ。

 それはその後も連続して放たれ、行商人の娘のまぶた越しに眩しさが襲ってくる。

(なんなの……?!)

 おののきながら思うも、何がどうなってるのかなんて分からない。



 ただ、思いも寄らない事が起こってるのだけは理解出来た。

 それがようやく落ち着いたと思い、おそるおそる周囲を見渡す。

 そこで彼女は、更に予想外の出来事を目にしていく。

 周囲の土が次々に吹き飛んでるのだ。

 そのせいか、周囲にいる巨大なバッタ(その姿を見て、彼女はあらたな恐怖をおぼえた)がのたうちまわっている。

 足下の土が突然吹き飛ぶのだから当然だろう。



 そんな事が周囲で次々に起こる。

 その度に草まで飛び散るから、周りがどんどん開けていく。

 だが、それは彼女にとって恐怖を増大させる役にしか立たない。

 周りが巨大なバッタで覆われてるのを目にする事になるからだ。

「ひっ…………!」

 腰を抜かしてその場にへたり込む。

 次いで、股間を生温かい液体が覆っていく。

 それに気づく事も、気にする事もなく、娘は周りのバッタに目を向けていった。



 理性でなく本能が生命の危機を察知する。

 するのだが、どうにかできるわけもない。

 ただ、周りの状況を目で追いかけるだけだった。

 そんな彼女の前で、今度は大量の水があらわれ、周囲に落ちていく。

 水しぶきがあがり、粉々になった土と混じり合っていく。

 それらが何度か繰り返され、その間で閃光が走る。



 何度かそれが繰り返されたところで、再び地面が爆ぜた。

 水と混じり合ったそれは、娘にもいくらか降りかかる。

 もろにかぶった娘は泥だらけになっていく。

 だが、彼女はそれに大した反応を示しはしない。

 もう既に放心状態に陥っており、ただ周囲の様子を呆然と見据える事しか出来なくなっていた。



 娘のそんな状態を視界の隅で見たトモルは、余計な騒ぎにならなくて好都合と考えた。

 どのみち、無理して助けようなどとは思ってもいない。

 ここでバッタに襲われてしまうなら、それはそれで良かった。

 トモルのやってる事を知る人物がいなくなる。



 どのみちこうして魔術を使ってるところを見られたのだ。

 むしろ襲われてくれたほうがよっぽどありがたい。

 死人に口なしである。

 たとえここで死体として発見されたとしても、子供が間違ってこんな所まできてモンスターに襲われた、という事になるだけである。



 トモルとしては願ったりかなったりであった。

 それに、この娘の事を考えてる場合でもない。

 今はモンスター退治のための仕上げに入っていかねばならない。

 バッタの大半が作り出した泥の中でもがきだしてる今が、おそらく絶好の機会なのだから。

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