199回目 帰郷にあたってまた問題が 2
(この状況を変えたいんだろうなあ……)
冒険者達への指示を出すために、隠れて実家の方に出向いてるトモルである。
ある程度の情報は手にしている。
そこから推測するに、今回の婚姻の目的はそこにあるのだろうと思った。
姻戚とする事で影響力を強め、従わせる。
親類縁者として内部から攻略する。
だいたいそういったところなのだろうと思えた。
それに対するトモルの考えは、たった一言で終わる。
(バカか)
この手の連中が、姻戚になったところで言う事を聞く訳がない。
せいぜい、面従腹背で表向きは適当にこなしていくだろう。
むしろ、事態はより悪化する。
姻戚となった事で領主の権威を利用する。
間接的に領主の力や立場を利用するとも言う。
手の付けられない輩を、目の届く範囲に置いて監視したのだろうが。
そんな事、出来る訳がない。
むしろ、敵を内部に引き込む事で、内側から食い荒らされるのがオチである。
仮に多少なりとも大人しくさせたとしても、その為の手間がかかりすぎる。
常に監視していなくてはならず、その為に費やす労力がバカにならない。
それでも得られる利益があるならともかく、実際には損失の方が大きくなる。
手の付けられない問題を起こすような輩など、何の利益も生みださないのだから。
また、何か問題を起こしたら、上位にあたる者の監督責任が問われる。
そうなった場合、火の粉をかぶるのは柊家だ。
当事者のタケジの家ではない。
それが分かってるからこそ、問題を起こす輩は今後も問題を起こし続ける。
その責任は全て上位にある者がとるのだから。
この手の輩は、さっさと排除するのが最も有効な手段である。
文字通り切り捨てて始末すれば、何も出来なくなる。
生きてる限り常に危険な事を引き起こす可能性があるのだから。
いや、可能性ではなく必然といって良いだろう。
それがいつになるかは分からないが、必ずそのうち問題になる。
そんなものをどうやって有効活用するというのだろうか?
火の扱い方とは違うのだ。
火は使い道によっては役立つが、取り扱いを間違えれば危険になる。
だが利点があるからどうにか用いようとする。
しかし、問題を起こす輩というのは、こういうものとは違う。
努力して失敗したというのとも違う。
問題を起こす輩というのは、そもそも努力すらしない。
己の利だけを考え、他者を害する事を躊躇わない。
だからこそ問題になるのだ。
誠実さが無い、とも言える。
なので、火のように細心の注意で扱うものと同列には語れない。
常に害にしか成らないものと混同してはならない。
何の利用価値もなく、持っているだけで害悪になる。
タケジの家はそういう存在だった。




