191回目 学校における出来事のちょっとした事後報告 3
「そのような事があったならば、お困りの方もいるでしょう。
その方々の所へ」
「まあ……」
「それは……」
取り巻き達から感嘆の声が上がっていく。
いずれも、ヒロミの言葉に感銘を受けた調子のものだ。
それを受けてヒロミは続ける。
「さすがに事に関係していた方々はどうしようもありません。
ですが、そのご家族をそのままにしておくのもしのびありません。
手助けする事は出来ませんが、せめて慰める事は出来ないかと」
それを聞いた取り巻き達は口々に、
「素晴らしいですわ」
「お優しいお心遣いです」
「さすがヒロミ様です」
と口々に褒め称えていった。
藤園という巨大な権勢をほこる家の出自であっても、ヒロミに出来る事などそれほどない。
事件の関係者として処罰された者を救う事は出来ない。
その家族などの縁者を救済する事も出来ない。
事件の影響を受けて、それらが失う権益を回復させる事も出来ない。
だが、そういった者達に接する事は出来る。
そこで、
「今回はお気の毒でした」
と声をかける程度の事は出来る。
また、それが出来るのがヒロミの強みでもあった。
権力をもたないヒロミであるからこそ、事の関係者に接触しても問題は無い。
慰めの言葉をかける程度ならば、大した事でもない。
もちろん、事件の関係者の家族を慰めるなど、良識や秩序をもとに考えれば許される事ではない。
直接関与してなくても、悪事による利益を受け取っていたのだから。
間接的な利益享受者であるのは疑いの余地がない。
しかし、そういった場合でも、
「直接関与してるわけではないのに、そんな事を言っては可哀相です」
と言えば、それで追及する側が悪になる。
それで追及が完全に止むことはない。
だが、大なり小なり軽減はされる。
それも藤園の姫がそう言うのだ。
権限や権力がなくても、それなりの影響力は出る。
ただ訪問をして声をかける、それだけで糾弾の声などはおさまっていく。
そして糾弾の声が無くなれば、捜査当局も追及するのが難しくなる。
今まで声を揃えて糾弾し、様々な情報を提供していた者達が口をつぐむからだ。
更に、捜査をしてる者達への非難すらもあがっていく。
これ以上追及してどうするのか、と。
悪事を働いた者達を捕らえ、それらが手にした不当な利益を回収するのに必要なのにも拘らず。




