表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/531

19回目 下手に探りをいれるような事をしないのも、大人の智慧なのでしょう 3

「さて」

 草むらの中で目の前の女の子に問いかける。

 モンスターの出てくる所からは離れようとしたが、それだと村の近くまで戻らねばならない。

 なので、それは断念する。

 また、あえてモンスターから遠ざかる必要も無いと思い直し、更に奥地まで進んできていた。



 村から遠い茂みの中、逃げだそうにも逃げられない場所。

 そんな地点でトモルは女の子……行商人の娘を見下ろす。

 小さな女の子を人目の付かないところまで連れてくるという、犯罪の臭いがしそうな状況である。

 実際、無理矢理引っ張ってきたのでかなりまずい事になってる。

 だが、そんな事を無視して目の前の女の子を詰問していく。



「なんでついてきた?

 何が目的だ?」

 相手が素直に答えるとは思わなかったが、聞くだけは聞いていこうと思った。

 ついでに、ステータス画面を開き、『心理』と『交渉』を手に入れる。

 レベル1なので大した効果は期待できないが、無いよりはマシである。

 相手が子供という事もあるので、これでも随分とマシになるはずだという考えもある。

 なにより、能力値の違いが大きい。

 基本的な能力が高いならば、技術が低くてもどうにかなる可能性があった。

 もっとも、相手がそれを上回る何かをもってれば話は別であろうが。



(さすがにそれは無いだろうなあ)

 相手は自分と同じくらいの年頃の子供である。

 基本的な能力でそれほど優れてるとは思えない。

 相手がトモルと同じような転生者であるとか、とんでもない才能を持って生まれてるのではないかぎり。



 ただ、そういった存在である可能性もある。

 持って生まれた才能があるかもしれない。

 だから警戒は決して緩めなかった。

 子供で女である事など、気を緩める理由にもなりはしない。

 むしろ、子供であるからこそ正邪善悪の区別が付かずに悪さをする。

「女の子なんだから」という言葉で守られてきたからこそ歪んだ特権意識を持ってる。

 そう思って対処していく。



 実例として、貴族のご令嬢達がこれをよく使う。

 嘘と涙まみれの讒訴によって、トモルはいわれなき罪業の数々を被せられた。

 こういう事については、むしろ女の子の方がよっぽど残酷で邪悪な事をやらかしてくれる。

 だからこそ、相手が子供であろうと、女であろうと容赦をするつもりにはなれなかった。

 理非をわきまえぬ存在ほど罪深くおぞましいものはない。

 その罪は、深く重い。



 そんな剣幕にさらされた行商人の娘は、かなり自分がまずい状況にいる事を自覚していった。

 何が逆鱗に触れたのか分からないが、やってはならない事、触れてはいけない部分に踏み込んでしまったのを肌で感じていた。

「ごめんなさい……」

 どうにかそれだけ言うが、その次に瞬間、トモルの怒気が跳ね上がったのを感じた。

「おい……」

「…………」

 気温とは別の寒さを感じていく。

 今まで生きてきて、これほど体が震えた事は無い。



(なんで、どうして)

 疑問を抱くも答えはない。

 あやまったのに何で、という思いがこみあげてくる。

 だが、トモルからすれば、あやまってどうするのだとしか言えない。

 それで起こった何かが覆るわけではない。

 補償や補填があるわけでもない。

 ただ一言で全てを済まされる事になる。

 全く何の意味もありはしない。



 むしろ、受けた損害を言葉だけで終わらせられるだけ損をする事になる。

 謝罪とは悪さを事実上容認する最悪の罪業であった。

 トモルにとってはそんなものでしかない。

(あいつらと同じか)

 思い出すのは自分にちょっかいを出してきた貴族子女である。



 身分差があるからと手を出してきて、徹底的に反撃をしてやったら頭を下げる。

 それで済まそうとする魂胆が許せなかった。

(やったんなら最後までやれ)

 トモルに手を出したのだから、最後まで、それこそ死ぬまでやれと思った。

 手を出すというのはそういうつもりであるからやる事であろうと。



 悪戯で人を傷つけ、遊びだった……などという言い訳が通じるわけがない。

 手を出すというのは、そういう事にしかなりえない。

 相手に危害を加えて、それで反撃を受けたから怖じ気づく、など理解しかねた。



 だからこそ、最後までやれと思った。

 相手が死ぬまで、自分の手で殺すまで。

 その覚悟もないのに人に危害を加えるとはどういう事なのかと疑問を抱く。

 遊びで許される事ではない。



 トモルが反撃で容赦をしないのはその為だった。

 部屋を泥だらけにするだけでなく、階段やテラスにいれば、突風をぶつけて突き落とした。

 池に落ちれば、水を絡めさせ浮き上がれなくした。

 殴りかかってくれば、関節を砕き骨が折れるまで殴ってやった。

 それから治療魔術でなおし、再び徹底的に殴り倒していった。

 徹底的に、あるいは他の誰かがやってくるまでそれを繰り返してやった。

 証拠が残らないから、どれだけ訴えられてもしらを切る事が出来た。



 行商人の娘がそういった事をしたわけではないが、トモルが隠してる事を暴こうとした事に変わりはない。

 それがばれて、今は頭を下げてあやまってくる。

 なんでだ、と思った。

 あやまるくらいなら最初からやるなと思った。

 実際、

「あやまるなら、最初からやるな」

と口に出していく。

 相手は肩を大きく震わせる。

 そして泣き出す。



(なんとまあ……)

 驚いたり慌てたりする事もなくそれを見つめる。

 むしろ盛大に呆れていく。

(泣いてどうすんだ)

 それで事態が変わるわけではない。

 感情の発露であるのは分かるが、全く意味が無い事だった。

 少なくともトモルは求めてない。

 欲しいのは、露見したこの事実(モンスターの出てくる場所へ出向いてる)をどうしてくれるのかという事である。



 親や周囲から介入されないように、トモルはモンスター退治を秘密にしている。

 既にばれてるかもしれないと思ってはいるが、それでも基本的には誰にも言ってない。

 周囲も気づいてるかもしれない、あえて何も言わないだけかもしれない。

 それでも何も言わないというのは、黙認してるという事なのだろう。

 行商人がトモルと取引をしてるのと同じように。



 しかし、それが今崩れた。

 正確には、行商人の娘が口外するまでは秘密は保たれる。

 保たれるが、それがいつまでなのか、という事が問題になる。

 子供の事である、何かと吹聴する可能性がある。

 いや、子供に限った話ではない。

 大人であろうと誰であろうと、抱えた秘密を口にしない可能性は無い。

 だからこそ、尾行してきたこの娘が問題になる。



 まだ実際にモンスターと戦ってる所を見られたわけではないが、こんな所まで出向いてきたのは既に見られている。

 それを口にすれば、周りの者達は何事かと思うだろう。

(どうすっかな)

 泣いてばかりいる娘を前にして考えていく。

 上手くこの事実を隠蔽する方法を。

(そうそう上手くいくわけねえよなあ……)

 だからこそトモルは悩んでいった。



 そんな悩みで時間を消費したのが事態の変転をもたらしていく。

 意識が行商人の娘と、自分のしてる事の隠蔽に向かってる事が、周囲への注意を奪っていた。

 その意識が周囲に引っ張られたのは、身につけていた『発見/探知』のおかげであろうか。

 すぐに探知魔術を使い周囲の様子を把握する。

「……くそ」

 既にかなりまずい状況に陥ってしまったことを知った。



 泣いていた娘も、その言葉で我に返る。

 もちろんトモルはそんな事に気づきはしない。

 そんな事よりも、周囲の状況の方が問題だった。



 探知魔術によって意識の中に、周囲を囲むモンスターの存在が示されている。

 一匹二匹どころではない。

 それこそ何十という数が迫っている。

(どうする……)

 まだ接触するほど接近してはいないが、すぐにでもやってくる。

 それまでに対策を考えねばならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ