179回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 9
それでも状況は少しずつ変わっていく。
小さな変化を一つ一つ。
それらを積み重ねて有効打を放つ。
その有効打が次の一手への橋頭堡になり、新たな場面へと向かっていける。
新学期になってからそんな事を繰り返し情勢を変化させていった。
学期末になる頃には学校内の勢力が大きく変化していった。
それは学校内だけではない、学校の外も巻き込んでの変化だった。
「間に合いそう?」
ほぼ毎日のように尋ねる事をタカフミに尋ねる。
「多分なんとか。
どうなるか分からないけど」
「まあ、そうだな」
いつも通りの答えにトモルは不満もなければ満足もない言葉を漏らす。
失敗するかもしれないが、成功するかもしれないというあやふやな言葉。
それは、確かに確実性に欠けたものではある。
だが、悲観する程酷いものでもない。
(よくまあ、ここまでこれたもんだ)
そうも思う。
失敗する事の方が当たり前なのだ。
なにせ急造の集団であり組織である。
まともに動けるわけがない。
しかも、構成員の大半が子供だ。
これでどうやって成功するというのか。
実際、計画当初は「無理だ」「不可能だ」という声の方が大きかった。
成功をほのかでもにおわすような発言などは皆無と言って良かった。
それがわずか数ヶ月で「出来るかもしれない」というところまで来た。
大喜びする事は出来ないが、それでも状況は悪くない。
このままいけば、成功をほぼ確実なところまで持っていけるかもしれない。
そう思えるところまで来れたというのはありがたい。
「そしたら次はどうするかね」
「どうするのさ?」
「ただいま考えてる最中だ」
「なるべく早く決めてね」
トモルの言葉にタカフミは容赦なく要求を突きつけてくる。
「でないと、次の動きが滞るから」
「はいはい」
返事をしながらも、タカフミの言葉にも成長を感じる。
(状況が分かるようにはなってきてるんだろうな)
次の指示がない事には組織全体の動きが止まるというのが分かるくらいには。
全体の流れは分からなくても、皆に出してる指示がどういったものか。
その指示で何がどこまで動くのか。
それらが何時頃終わって結果が出てくるのか。
そういった事は把握出来てるのだろう。
だから、次の動きが滞ると言っている。
「なるべく早く決めるよ」
「そうしてくれると助かる」
言いながらタカフミは手にした何枚もの紙を交互に見ていく。
記された進捗状況を読んで頭に入れてるのだろう。
作戦参謀としては好ましい行動である。
そのままの調子で成長していってもらいたいものだった。
「でも、これって上手くいくのかな?」
「それは分からないよ」
「失敗したらどうするの?」
「その時はその時だ」
「そうならないようにしたいね」
「そうだな」
失敗を恐れ、成功を求めながら、そんな事を呟きあっていった。




