175回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 5
日中を瞑想に用いるトモルの本格的な活動は、基本的に放課後からになる。
日々、学校のあちこちから流れてくる情報を耳に入れ、頭を使っていく。
だいたいが、異常なしといった事で終わるのだが、それでも本当に何も無いというわけでもない。
気づかないほど小さな動きがあったりする。
それを感知出来るかどうかがトモルが気がかりなところであった。
トモルが直接動けば、様々な事に気づく事もあるかもしれない。
だが、それをトモルはあえて制限していた。
(俺がやっても意味ないからなあ、こればっかりは)
トモルが求めてるのは、成果ではないのだ。
組織としてとりあえず編成した学生達。
それらが適切に動けるかどうか。
動くとしたらどのように動いてるのか。
それを知るために、トモルはあえて情報が集まってくるのを待っていた。
学生達に指示を出し、やり方を伝授したりはする。
それこそ手取り足取りと言えるほど丁寧に、可能な限りかみ砕いて分かりやすくして。
手本を見せて、やらせてみせて、成功しようが失敗しようがやった事を褒めてやって。
そうやって学生達を育てていった。
結果は基本的にさんざんなものである。
やらせてもまず失敗する。
成功する事などほとんどない。
だが、それでもトモルは構わなかった。
所詮は子供のやる事である。
成功するわけがない。
上手くいけば良いとは思うが、そんな事どうでも良かった。
(これで経験値が増えてれば)
狙いはただそれだけであった。
経験値を増やす。
少しでも育成をしておく。
技術レベルを伸ばすためにあれこれと作業をさせる。
ただそれだけであった。
そうやって実行していくうちに、少しは何かが身につけば良いと思っていた。
子供のうちからやっておけば、何年かすれば少しは形になるだろうと思って。
実際、それなりの形にはなってきている。
ごっこ遊びと同レベルであっても、何となく組織みたいな動きが出来るようになってきていた。
情報収集にしろ、何らかの働きかけにしろ、それなりに動くようにはなっている。
子供にしては、という程度ではあるが、それでも少しずつ淀みが無くなってきている。
今後もこの調子でいけば、将来が楽しみであった。
学校という教育の場は、トモルと手下達に確かに学びの機会を与えていた。
ただ、本来望まれてるものとは違うのだが。
咎めるものも修正するものもここにはいなかった。
それは、トモル以外の者達にとっては不幸であるかもしれない。
ただ、トモルにとっては幸いであった。




