174回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 4
着実に成果はあがるも、その進歩の遅さに焦れったくなる日々が続く。
それでいて、学校とダンジョンとの往復が続き、とてつもなく忙しい毎日でもある。
本当に効果があるのか、あるにしても労力に見合ってるのか疑いたくなる。
だが、これを続けねば先はないと自分に言い聞かせ、黙々と作業を進めていく。
神経がすり減るような、泥に足を取られるような気分になっていく。
それでも確実に先に物事は進んでいっている。
結果が出てるのかどうか疑わしくても、振り返れば着実に足跡は残ってる。
一日では見えてこない成果は、一ヶ月二ヶ月という時間の後に確認が出来る。
そんな事をあらためて実感しながら毎日を過ごしていた。
そんなトモルにとって、少しは安らげるのが授業の時間だった。
内容が楽しいわけでも役立つわけでもない。
その瞬間だけは、他に何もしないで済む。
ただそれだけの為に授業に付き合っていた。
トモルの能力では既に通過地点に過ぎない内容に。
なのでトモルはまともに授業は受けていない。
それは今のところ瞑想の時間となっている。
忙しくかけずり回るトモルにとって、それはそれで貴重な時間にはなっていた。
ただ、授業内容そのものをバカにしてるというわけでもない。
試験に出るので内容は頭にいれてるが、それそのものには興味をひかれる部分もある。
前世でも触れる事がなかった政治関係の思想や哲学などは真新しいものである。
そこには純粋に興味をひかれるものがあった。
支配階級というのがどういった考え方をするのかを垣間見る事が出来る。
トモルの年齢だと、学ぶのはそのさわりでしかないが、それでもなかなか面白いものがあった。
知る事の快感と言える。
何も知らない、分からないという状態が解消されるのは結構楽しい。
その分だけ新しい何かが出来るようになる。
今まで見えてなかった部分が見えてくるというのは、なかなかに面白いものがあった。
相手の考えが分かってくるというのもある。
思想や哲学は、言い換えると貴族の考え方というものにもなる。
それは、貴族のやり方や手口を知るという事でもある。
授業で教わる事が全てではないだろうが、その一端は見る事が出来る。
少なくとも、平民では習わないような事が教えられていく。
なるほど、支配者や為政者というのはこういう事をやるのかと感動をおぼえた。
それは良い感情というわけでもない。
こんな手口を使ってたのかと呆れるやら嫌悪感を抱くやらというのもある。
だが、それらを知る事で対応や対策を考える事も出来る。
トモルにとって、これはこれで大きな事ではあった。
とはいっても、それらも身につけた知識技術や高まった能力値から容易に導き出せるものではある。
極端に真新しいというわけでもない。
しかし、授業という形で、教師や教科書から伝えられてくるというのは、別の刺激がある。
頭の中にあっただけのものに、別方面からの視点や刺激を受ける事もある。
それがトモルに、更なる思考の飛躍をもたらしもした。
全てが無駄という事もない。
それでも瞑想してる時間の方が長く、授業は基本的に休養に等しいものではあった。
これを書き込んでる時点までに届いた誤字脱字の報告分は修正した。




