173回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 3
貴族の権限は爵位で決まる。
基本的にはそうなっている。
だが、それだけで決まるほど簡単なものではない。
たとえ爵位が低くても、実力があるなら相応に評価される。
治世が長く続くと、その間に様々な出来事が起こる。
爵位が高くても実質的には没落して最下級の貴族並みの暮らししかしてない家もある。
最下級でありながら、その後発展して上位の貴族に匹敵する勢力になってる所もある。
これが貴族の勢力図を複雑なものにしていた。
トモルの家も爵位でははかれない実力を持つ家になりつつある。
流入した冒険者とその周辺で商売をする者達。
そこから上がってくる税収と、新たに開墾しようとしてる田畑など。
これらが柊家の持つ力を増大させている。
貴族同士の繋がりも強化されていた。
統治側として必要な人員を確保するために、他の家の部屋住みを取り入れたのが大きい。
これらが家同士の繋がりを深めていった。
派閥や勢力という程ではないが、それでも柊家を中心とした結びつきが生まれている。
こういった事が貴族社会の中で柊家の立場を向上させている。
それはそのまま学校内におけるトモルの立場にも影響を与えていった。
まだ小さなものではあるが、トモルの周囲にも取り巻きのようなものが形成されていく。
これはトモルが実力でまとめあげただけのものではない。
トモルの実家への採用で口をきいた家の子息。
それらが周囲に集まってきたのだ。
そういった者達からすれば、トモルは部屋住みを雇い入れた家の令息。
徒や疎かには出来ない存在になっていた。
露骨に思えるそういった扱いに、トモル自身は閉口するものがあった。
気持ちは分かるが、そこまでへつらう必要は無いだろうと。
だが、立場が逆だったら自分もそうせざるをえなかっただろうとも思う。
そう考えると、現金な態度を見せる取り巻きのような者達を邪険に扱う事も出来なかった。
「まあ、そんな硬くならないでくれ」
そう言って彼等に変な気を使わせないようにしていくしかなかった。
それに、寄ってくるのはトモルと同じ爵位の家の者達である。
そんな中で無駄に上下関係を作るのも気が引けた。
離反や裏切りは困るが、そうでないならば、ある程度は気楽な関係でいたかった。
立場上、トモルが仕切らねばならない事もあるだろうが、それはあくまで必要な時だけにしておきたかった。
階級社会の中で、それはとても難しい事ではあったが。
だが、何はともあれトモルにも側近と言える者達が出来つつあった。
貴族社会に限った事ではないが、ある程度の地位を狙うなら必要になる者達である。
片腕や知恵袋とはさすがにいかない。
言葉は悪いが使いっ走りと言うしかないような者達ではある。
だが、自分に同調して行動してくれる存在というのはありがたいものではあった。
学校内の組織というか指令系統を運営するのにも役立つ。
トモルがいない間のとりまとめを頼めるからだ。
出来れば今後は中枢組織として頑張ってもらいたいところであった。
それだけの能力や才能があればであるが。
(こいつらもレベル上げに連れていくしかないかな)
そんな事を考えもした。




