172回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 2
冒険者達によるモンスター退治が日常化した事で、村の方にも大きな動きが出てきている。
村にいる冷や飯食いを集めての整地・開拓だ。
モンスターの排除だけでなく、それによって増加した税収もあり、費用の捻出には困らなくなっていた。
これを見て、柊家も動き出していった。
とはいえ、耕作地を増やすのは簡単ではない。
雑木や雑草を切り払い、土を耕し、水路を引くといった手間がかかる。
これらをこなした後に収穫が出来るようになるのだ。
そこまでには多大な時間がかかるだろう。
だが、これで自分の田畑が持てると、村にいた末っ子などは張り切っている。
今のままでは家にいても自分の所帯を持つ事は出来ない。
あくまで食べていけるだけである。
そこから抜け出すためにも、彼等は新たな事業に乗り出していった。
やるべき事は多く前途は多難である。
領地内から働ける者は総出で事に当たってるが、そう簡単にできるものではない。
ものによっては技師を呼ばねばならない作業もある。
自然と柊家の総力を結集した事業となりつつあった。
それくらいの規模と価値のあるものではあった。
なんだかんだ言って農村である柊領において、耕作地の増大は勢力と規模の増大を図る手段だ。
そして、それが可能な場所が目の前に拡がっている。
モンスターが蔓延る危険地帯であるという事でもあるが、脅威が排除されれば発展の可能性がある。
柊家は今、そんな幸運を掴んでいる最中である。
事業に乗り出さない理由は何一つ無かった。
こうした状態を保つためにも、トモルは冒険者の育成に力を入れていった。
レベルを上げるだけではなく、最低限必要な知識や情報も提供していった。
新人をそのまま放り出してモンスターの餌食にさせないためである。
素人なのはどうしようもないが、せめて生きて帰ってくる事が出来る状態にしておく。
そうする事で生還率を高め、規模と質の拡大を目指していった。
でなければ、モンスターの駆除なんてとても出来やしない。
人手は未だに不足気味であり、まだまだ人数が必要だった。
その為には、死亡率を極限まで下げねばならなかった。
毎年新人が入ってくるとはいえ、それらが死に絶えていては意味がない。
着実に何年も戦歴を重ね、レベルを上げていく生え抜きがいなければ拡大や成長など出来ない。
戦力の確保と同時に維持もしていかねばならない。
それらが勢力の基盤になるのだから。
そのせいか、新学期の間に柊領近くに展開する冒険者の数は更に増大していった。
普通なら、戦闘での死亡などで入れ替わりが激しく、一定の数以上には増えないからだ。
だが、可能な限り死傷率を下げるよう努力した結果、損害が劇的に下がった。
負傷も治療可能な段階に留まる者が増え、死亡や再起不能に至る者が減った。
それでも野辺に倒れる者は出てしまうのだが、それよりも流入してくる新人の数の方が勝った。
結果として、緩やかな増大がその後も続くようになっていった。
こうした事態を背に、柊家やトモルの存在感は次第に高まっていった。




