168回目 新学期にて行っていく事 2
学校での実践だけに留まらない。
何人かは強制的にダンジョンに連行し、そこでモンスター相手に鍛え上げもした。
普通であれば危険過ぎるのだが、トモルがついていくと話が変わっていく。
何せ、魔術による能力強化がある。
これを使えば、子供でもそこらの冒険者を軽く凌駕する能力を持つ。
それを用いてトモルは、強制連行した者達をモンスターに突撃させていった。
当然ながら子供達は最初は恐慌状態に陥っていた。
モンスターという危険な存在に突っ込めと言われてるのだから当然だ。
しかも、入るのは正真正銘のモンスターの巣窟であるダンジョンだ。
ろくな戦闘訓練を受けてない子供達にとっては、恐怖以上の脅威だ。
連れてこられた者達は、ここで自分は死ぬのだと思ったりもした。
だが、トモルによって強化され、難なくモンスターを倒せると分かった瞬間にそれも一変する。
「凄い、こんな簡単にモンスターを!」
「やった、どんどん倒していける」
「おーい、こっちからまた来るぞ」
「よっし! じゃあまた片付けてやる!」
ほぼ一方的にモンスターを撃破出来る状況は、生徒達にとって最高の娯楽となった。
本来なら生命の危機がつきまとう危険な作業であるのだが。
圧倒的な能力差により危険が極限まで低下してしまえば、それはスリルのある娯楽に等しくなる。
次々に襲いかかってくるモンスターを撃破する彼等は、実に生き生きとした表情をしていた。
そんな調子で二週間も活動すれば、レベルは一つ二つは上がる。
年齢的にレベル1なのがほとんどだった生徒達は、ここで一気に成長をしていく。
そして、レベルアップによって得られる振り分け可能技能点を使って、必要な技術を伸ばしていく。
この場合必要なのは、学校で習う学問ではない。
トモルの組織員として働くための知識や技術である。
それらを技術レベル1でも良いから身につけさせていく。
こうしておけば、最低限の行動は出来るようになるので、トモルも楽が出来る。
また、行動を通してより高い技術レベルに成長させる事も出来る。
こうしてトモルは、自分の組織の人間を着実に成長させていった。
それは組織そのものの強化にも繋がっていく。
組織は人で成り立っている。
この人が成長すれば、組織も自ずと成長する。
実際、トモルによって成長した者達の動きは、違いがはっきりと感じられるほど変わっていった。
レベルが上がるまでは、言われるがままに戸惑いながら作業をこなしていた。
しかし、レベルが上がり、技術を身につけてからは、自分で考えながら行動出来るようになっている。
何をどのようにすれば良いのかがしっかりと分かっている。
動きに迷いや無駄がなくなっている。
技術レベル1程度なのでその差はさほどではないが、それでも違いは出ていた。
これを見てトモルは、主な者をダンジョンに連れていくようになった。
授業との兼ね合いがあるのでそうおおっぴらにはやれない。
どうしてもレベルアップは限られた者達のものになってしまう。
そこがもどかしいところではあった。
だが、焦っても仕方が無いと自分に言い聞かせ、地道に着実にこなしていくようにする。
急いで失敗したら元も子もない。
この後書きを書き込んでる時点までにもらった誤字脱字報告の文は修正済みであります。




