165回目 夏休み明けの初動 2
(子供に分かるような事はしてないか)
同級生から聞き出した、「特に変わった事はなかったと思う」という答えから得た情報だ。
本当に何もないのか、実際には何か隠してるのではないかとは思う。
だが、それを子供に悟られるほど表に出してはいない。
実は何かが起こってるのかもしれないが、それで心が動くほど悲惨な事態にはなってないのだろう。
だからこそ平静を装っていられる。
つまりはそれほど大事になるような事は起こってないのだろう。
本当に何も起こってない可能性だってある。
(まあ、そうそう大事件なんて起こりはしないだろうけど)
貴族が慌てふためくほどの事件が起こっていれば、国内に何らかの動きがあるはずだ。
それが無いということは、基本的には平穏無事という事でもある。
何もない、気づかなかったという事から、トモルはそう判断していた。
これはこれで貴重な情報である。
小さな事はともかく、大事になるような事件は発生してない。
そういった連絡も流れていない。
少なくとも、同級生達が学校に戻る直前までは大した情報は伝達されてない。
そう判断して大丈夫だろう。
楽観は出来ないが、さりとて無駄に悲観する事も無い。
(となると、俺がやった事はそれほど漏れてない……か?)
トモルが懸念する事の一つである。
学校内で起こした出来事は外に漏れてない。
漏れてるにしても、まだ大事にはなってない。
それははっきりしている。
もしかしたら、とるにたらない小さな事として伝わってるのかもしれないが。
だが、だとしたらそれ程大がかりな追及や調査などはされないだろう。
ちょっとした事は起こるかもしれないが、それは教師や職員などを使って取り繕っておけばどうにかなる可能性がある。
また、学校以外のところで起こしてることもそれ程大きな問題にはなってないようだった。
つまり、ダンジョンの破壊とそれによる冒険者と商売人達の移動などである。
それらはかなり大きな出来事であるとは思うのだが、これについても特に話に出てくる事はなかった。
大人達の間で何らかの情報伝達はあるかもしれないが、子供達には何も伝わってないのだろう。
となれば、ダンジョン破壊とこれに伴う出来事は、国にとってはそれほど大きな出来事ではなかったという事だろうか。
多少は手間がかかるにしても、解決可能な出来事であると。
ならば、これについても面倒な追及がされる可能性は低いと判断出来るかもしれない。
あくまでトモルの考えである。
実際に何がどうなってるのかは分からない。
だが、今のところはそれほど問題は無いと思えた。
子供達の話から考えるに。
(となると、先生達の方だな)
そちらの方では何かしらの指示や通達が出てるのかもしれない。
そこはしっかりと考えておかねばならないだろう。
(売春組織が潰された事で、何か言ってくるかもしれないしなあ……)
ある意味これが一番憂鬱かもしれなかった。
そちらの方は、藤園カオリを通して多少は誤魔化してはいるのだが。
(そう長く保つとは思えないからなあ)
そちらのお仕事はカオリとその取り巻きの女子にやらせている。
なので、仕事そのものはしっかりとこなしている。
だが、本来なら統率する立場のカオリ達が客の相手をしてるというのは異常事態である。
それを見て、藤園の家が何らかの行動を起こす可能性もある。
(これは本人に聞くしかないか)
聞き取りはまだまだ続けねばならなかった。




