160回目 夏のひとときが終わった後の顛末
さて。
トモルが学校へと戻ったあとの村であるが。
増え続ける冒険者と商売人に、トモルの父もさすがに対応を考えねばならなかった。
まずは冒険者と商売人に、村の中での活動を禁止する事を。
そして、活動にしろ生活にしろ、それは村の外で行うようあらためて通達をした。
先に居住してる村人の生活を保つためである。
領主としてこれは決して外せない事だった。
新参者達がもたらす利益がどれ程大きくても、古くから住んでる者達を蔑ろにするわけにはいかない。
その為に、村の中への不用意な侵入を禁止した。
これには当然ながら田畑など全てを含む。
そうなると冒険者や商売人は村から追い出される……というわけではない。
あくまで住処の区分けを目的としたものである。
新しく来た者達にも居住する場所を指定している。
それは(暫定的ながら)冒険者や商売人に居住を許可したとも言える。
戸籍などを与えて住人としたわけではない。
だが、長期の逗留をする事になる旅人としての立場を明確にしたと言える。
根無し草の冒険者にとっては、これは結構大きなものだった。
余所者扱いである事に変わりはないが、余所者なりに居場所を得たと言えるのだから。
これを認められないと、不法滞在という扱いになる。
短期の逗留ならともかく、生活が伴う長期滞在の場合何らかの許可が必要なのが普通だ。
このあたりは、外国に滞在するのに旅券や相手国の許可が必要なのに近いものがある。
何せ同じ国内でも別の貴族の領地となると出入りに許可が必要な世界だ。
領主が滞在を認めなければ、即刻出ていかねばならない。
なので、冒険者はこの時点で居住をある程度は許可されたと言える。
もちろんの事、これはトモルの父の権限が及ぶ範囲での事であるのだが。
それでも冒険者とそれを相手にする商売人は、逗留する事を認められた。
早速指定された地域に居を構える準備を始めていった。
だが、そうなると管理をする必要が出てくる。
戸籍というわけではないが、誰がそこに逗留してるのかを記録せねばならない。
長期滞在者の出入りを確認するためである。
実質的な戸籍管理にと言える。
その為の台帳を作ったりするのに人手が必要になっていく。
また、村と冒険者達の居住地の間の境目もはっきりさせておかねばならない。
それらを見回り、監視する者が必要になる。
定められた場所以外に居住したり、村に勝手に出入りしては困るからだ。
これは田畑を拡張する事を考えてのものでもある。
冒険者によって安全地帯が拡がったのを見て、村は耕作地の拡大を考えていた。
だが、田畑とする予定の場所に冒険者や商売人が小屋などを建てたら大変な事になる。
そうならない為にも、田畑を作る予定の場所などに人が入らないようにしておく必要があった。
この辺りの場所の指定などもしっかりして、なおかつ場所を記録しておかねばならない。
商売人の管理も必要になってくる。
管理といっても監視したり商売に口出しするというわけではない。
冒険者と同じで居住地や商売をする場所を定めておくという事になる。
加えて、商売人達が出す利益から税金を徴収しなくてはならない。
更に言えば、不正の監視も必要になるだろう。
こうした事をするのに人手が圧倒的に不足している。
冒険者や商売人によって柊家の税収も増えたが、その分手間も増えていっている。
その手間をこなす人材が必要になっていた。
その人材をどうやって確保するかが悩みどころである。




