158回目 この状況とこの手札で出来る事はなんだろう 12
行商人がこの村に腰を落ち着けるならば、エリカの待遇も考えねばならない。
村の者と同化させて良いかどうかは悩ましいところだが、このまま一人で孤立させるのも考えものだ。
エリカと村の子供の間に亀裂が入ったら、行商人とて良い顔はしないだろう。
そうならないように上手く溶け込ませたかった。
そうすれば行商人をこの村に定着させる事が出来る。
確実な取引相手として、商人を一人くらいは抱えこんでおきたい。
そのためにも、エリカを蔑ろには出来なかった。
さりとて、どうやってエリカを取り込むかである。
みんなで仲良くしましょう、と言ってどうにかなるなら問題は無い。
そう簡単にいかないから悩むのだ。
とはいえ、全く方法が無いわけではない。
今ならば上手くいくかもしれないという方法がある。
(やってみるか)
そう思ってトモルは、それを切り出す瞬間を待つ事にした。
時間は夕食が終わった頃に進む。
明日明後日にはトモルも学校に戻らねばならないという事で、家族の団らんになっていく。
その中でトモルは、学校の話題が出たところで色々と話しをしていった。
「…………そんなわけで、お伴を連れてきてる人が結構いて意外でした」
「なるほどなあ」
そう言って父も母も頷いていく。
それはそうだろうと二人も分かってるのだ。
人数の制限はあるが、寄宿舎には召使いを伴う事が許されている。
トモルのような下っ端貴族ならともかく、上位の貴族ならばそれが当たり前である。
身の回りの世話は別の者にやらせるのが当然になっている。
本来ならば、着替えやら何やらで常に数人の召使いがいるのが普通なのだ。
だが、学校は自立心を養うためという事で、召使いを伴う事を禁止としていた。
なのだが、そういった規則も長い時間の間に有名無実になっている。
今では慣例として一人か二人までは伴う事を認められている。
もちろん本職の召使いを伴うわけにはいかない。
形骸化してるとはいえ規則は規則として残ってる。
それを破るわけにはいかない。
だからこそ、裏技のように、抜け道を作って対応している。
召使いではなく、一緒に入学する学友として学校に呼び込む。
事実上の召使いとして。
これが寄宿舎に召使いをつれていく方法だ。
その為に、幼少の頃から召使いとして教育された者が、貴族の子弟と共に入学する。
入学資格を得るために、わざわざ貴族と養子縁組をさせる徹底ぶりである。
もちろんこういった形で養子縁組された召使いが、そのまま貴族になる事はない。
役目が終われば縁組みを解消されるのが常である。
あるいは、格下の貴族の子弟を事実上の召使いとして学校に入れる事もある。
この場合、歴とした生徒として貴族の学校に入学するのだが、実態は完全な召使いとなる。
そのため、学校の授業などまともに受ける事は出来ない。
ひたすら、主となる生徒の世話で学校時代が終わっていく。
召使いとされた子供の人生を考えれば酷い事だが、親もそれを受け入れるしかない。
逆らえば貴族社会の上下関係が黙ってない。
子供の人生を無茶苦茶にされても、それを黙って受け入れるしかなかった。
それはさすがにどうだろうとトモルは思ってはいた
着替えなどの身の回りの事くらいは自分でやれるように、というのが学校の教育方針である。
その為に寄宿舎にて子供達は基本的に一人で行動する事を求められる。
それが崩されてる事にトモルは違和感をおぼえていた。
確かに身の回りの事全てを自分がやっていたら、自分の時間が無くなる。
仕事に専念するために、身の回りの世話を召使いにやらせるのも仕方が無い。
だが、多少は身の回りの事を自分でこなす訓練をしないのはどうなのだろうと思った。
それでは教育の意味が無いではないかと。
だが、それらが今回の場合、良いきっかけになってくれるかもしれない。
多少なりとも突破口になってくれればと思いながら話を続ける。




