149回目 この状況とこの手札で出来る事はなんだろう 3
何はともあれやる事は決まった。
翌日、トモルは朝一番で手下のいるダンジョンへと向かった。
そこには、あちこちから流れてきた冒険者が合流していた。
狙い通りの光景にトモルは安心する。
そして、巨大化していた手下達に用件を告げていく。
「辺境のここなら冒険者が活躍出来る場所がある。
まとめきれない連中はこっちに流してしまえ」
モンスターの取り合いを懸念していた手下達にとって、これは朗報となった。
それだけでなく、トモルはもう一つ用件を追加していく。
「商売人達にも教えてやれ。
こっちの方に冒険者が大量に出向くから、仕事ならそっちの方がいいぞってな」
これで冒険者周辺の商売も引き込む事が出来る。
乗るかどうかは分からないが、少しでも多くが移動してくれればいい。
それだけで辺鄙な田舎はかなり賑わう事になるだろう。
「まあ、移動はまた明日からでも。
こっちもやる事があるから」
そう言ってトモルは一旦その場を離れた。
冒険者達を移動させるにしても、すぐには無理である。
それに、やらねばならない事があるのは確かだった。
それから実家の方に戻って道路工事。
さすがにこれはすぐには終わらない。
だが、ダンジョンに到達出来なくても問題はなかった。
モンスターは野外でも多く、それらを倒すだけでも儲けは出せる。
その為には、野外における活動拠点も必要になる。
寝泊まりできる場所が。
トモルはそれを道路沿いに作っていく。
四方を壁で囲まれた避難所を。
ここに冒険者を放り込んで、当面の仕事をさせていく事にする。
押し寄せるだろう冒険者達を遊ばせるのはもったいない。
ひとまずこのあたりに放り込んでおく事にする。
そうすればイヤでも仕事をするはずだ。
それらが終わると、行商人の所に出向く。
行商人と言いながらも最近は村に居る事が多くなっている。
おかげで捕まえるのはそれほど難しくはなかった。
「学校で噂に聞いたり、冒険者達から話をしてもらったんだけど。
どうも大量の冒険者がこっちに来るみたいなんだ。
国内のダンジョンもどういうわけか潰れたみたいだし」
「へえ。
そりゃあ初耳ですな」
「うん、どこまで本当か分からないけど。
だから、もしかしたらかなり大勢がこっちに流れてくるかも」
「はあ、そりゃあ大変で……」
そう言いながらも行商人は考えていった。
それが本当なら、商売を拡げる機会だと。
「まあ、そうなったらそうなったで頑張るしかないですな」
「うん、頑張ってね」
それだけ言ってトモルはその場を離れた。
行商人がどう動くかは分からないが、事前に教えておくのは悪い事ではない。
(いきなり冒険者がやってきて対応出来ないだろうし)
そんな状況を作らないためにも、多少は事前に情報を提供していく。
それが上手くいくかどうかは分からないが、可能な限りの手は打っておく。
それらが終わってから子供達の所に。
いつものように遊んでる最中に、トモルは思い出したように伝えた。
「そうそう、これ、学校の方で聞いたんだけど」
「え、なに?」
「どうした?」
「何かあったのか?」
「いやな、どうもダンジョンが幾つか無くなったみたいなんだ」
それを聞いて子供達は驚く。
「ダンジョンが?!」
田舎の子供でもダンジョンの事は知っている。
それがどういったものなのかも。
正確に伝わってるわけではないが、
『モンスターがいっぱいいて、その中にいる特に強いモンスターを倒さないとなくならない』
という事くらいは理解している。
だからこそ、ダンジョンがなくなるというのは快挙であり、そう滅多にない事だというのを知っている。
それが無くなったと聞けば驚くしかない。
「それで、冒険者があちこちに移動してるんだって。
今までのダンジョンが無くなったから」
「へえ」
「そうなんだ」
「もしかしたらこっちにも来るかもなあって思って」
それを聞いた子供達は、互いに顔を見合わせていく。
冒険者達については、自分の親や周りの大人達が良い顔をしてない事は知っている。
だから、それがとても良い話には思えなかったのだ。
「大丈夫なのかな」
「冒険者だもんね」
そんな彼等は不安げな表情をしていた。
トモルが求めるように。
あとは彼等が家に戻って親に何を言うかである。
(上手くいってくれよ)
トモルは胸の中でそう願った。




