141回目 地元でも行うささやかな工作活動
道を作り上げてトモルは帰還する。
出来上がった道を自ら踏みながら。
そうしながら考えてもいく。
途中で襲ってくるモンスターをどうするかを。
当たり前だが、ここはモンスターの領域である。
周囲には大量のモンスターが存在する。
そこを人間が通れば襲ってこないわけがない。
それらをどうにかしない事には、安心して物資の運搬が出来ない。
輸送には護衛をつけるしかないが、それだけで凌げるような簡単なものでもない。
街道沿いに幾つか避難所が必要だった。
(それも作っておいた方がいいか)
帰宅途中で襲ってくるモンスターを倒しながら考える。
駅という程ではないが、途中で逃げ込める場所を作っておいた方が良いだろうと。
そこに冒険者を駐留させて、周辺のモンスター退治をさせる事も。
国内と違い、襲いかかってくるモンスターの数もかなりのものだ。
これらを倒すだけでも、冒険者として生活出来るほどの稼ぎが得られるだろう。
ならば、街道周辺の安全確保のためにも、冒険者を駐留させた方が良い。
それがどれだけの効果をもたらすのかは分からない。
だが、周辺の安全確保も、街道沿いの避難所の維持も、人がいなくては話にならない。
それはどうあっても考慮しておかねばならないものになる。
(道を造るだけってわけにはいかないか)
予想以上に出て来るモンスターを見て、トモルは考えを追加していく。
やはり実際に出向いてみないと分からない事は多い。
そう思いながら戻ってきたトモルは、そのまま村の方へと向かう。
家の者達には、村の方で遊んでくると言っておいたのだ。
魔術によってそう思い込ませ、それ以上の追及をしないように精神操作した。
ただ、これだと村の誰かにトモルの行方を聞かれた時に困る。
なにせトモルは実際には村にいない。
そんな事、村の者に尋ねればすぐにバレてしまう。
その為、適当な者をみつくろって口裏を合わせておかねばならない。
問題はそれを誰にするかである。
悲しいかな、トモルは村の子供達とそれほど接点があるわけではない。
村の教室で一緒だった者達はいるが、仲が良かったかというと悩ましいものがある。
決して仲違いしていたわけではないが、さりとて格別親しかったというわけでもない。
(最悪、精神介入しなくちゃならないかな)
そうする事でアリバイを作る事も考えていく。
だが、懸念は神社で解消された。
そこには見知った顔が幾つかあった。
習い事が終わって境内で遊んでいたのだろう。
それらはトモルに気づくと手を上げて呼びかけてくる。
「あ、若様」
「帰ってきてたんだ」
「久しぶり」
そう言ってくる。
屈託のない笑顔と声に、トモルも気分をほぐしていく。
「久しぶり。
元気だったみたいだな」
そう言って彼等に寄っていった。
思ったよりも親しく接してくる子供達に、懸念は少しだけ晴れていった。




