139回目 帰省の本来の目的
その後、ようやく食事やら何やらが始まり。
適当に受け答えをして。
ようやく自由を得られたのは、夜も更けてからになった。
トモルはすぐさま部屋を出て、外へと向かっていった。
目的はモンスターが跳梁跋扈する領域外。
人の世界の外側だ。
そこがどうなってるのか確かめるため、トモルは駆けだしていく。
いつものように身体能力の強化を使う。
更に探知魔術でモンスターの存在を確かめる。
能力の強化・増大にあわせて探知範囲が拡大されていく。
かなりの広範囲の分布状況が把握出来る。
それらを見て、トモルは足を動かしていく。
分布してるモンスターの生息範囲をひとまず越えて、更にその向こう側に。
モンスターの密度の濃い方向へと。
拡大された探知範囲のおかげで分かった事がある。
モンスターの分布状況にも違いがある。
密集してるところもあれば、疎らなところもある。
その差はかなり広く見渡さないと分からない事ではある。
だが、確かに密集の具合に差はあった。
そこから推測して、トモルは密度の濃い方向へと向かっていく。
途中にいるモンスターは、邪魔なら切り倒していく。
だが、核を手に入れてる暇や余裕は無い。
それが目的ではないのだ。
今はただ、目的のものがあるかを確かめに行く。
そうして走ること二時間。
トモルは目的のものを見つけた。
「……本当にあるとは」
見つけたそれを見て、トモルは愕然としてしまう。
おそらくはあるだろうとは思っていた。
しかし、本当にあるかどうかは分からなかった。
モンスターがいるから、おそらくはあるだろうと思っていた程度だ。
だが、それは確かにトモルの目の前にあった。
ここ最近破壊しまくっていたものと同じ、霧のような靄のかかった空間。
ダンジョンの入り口が。
モンスターが発生する根源と言われてるダンジョン。
それはモンスターが出没する地域には、ほぼ確実に存在する。
だから実家の近くにもあるだろうとは思っていた。
近隣にモンスターが出回ってるからだ。
それはトモルでなくても誰もが考えていた。
おそらくこの近くに確実にあるだろうと。
だが、正確な位置は分からない。
モンスターの蠢く辺境である。
その奥地へ向かうような命知らずはそう多くはない。
なので、予想はしても確認する事は出来なかった。
ただ、トモルは確実にあると考えていた。
あるとして、どこに存在するのか?
それを確かめたかった。
その為にここに足を運んだ。
そんなダンジョンを見つける方法。
特に目星があるわけではなかった。
しかし、モンスターの分布からおおよその見当はつくのではないかと考えた。
モンスターはダンジョンから出てくるのだ。
だったら、より密集してる所にダンジョンがあるだろうと。
その予想を確かめるために、わざわざやってきた。
探知魔術を使ってモンスターが集まってる場所へと進みながら。
予想は当たり、モンスターの集まってる場所にダンジョンはあった。
実家から数十キロくらい離れてる辺りだろうか。
そこにモンスターが発生する根源が存在していた。
それを見つけてトモルの考えは固まった。
出来るかどうかは分からないが、これがあるならこの先の生活には困らない。
少なくとも稼ぐための財源はここにある。
(ここに冒険者を集めよう)
そしてここを拠点にしていく。
周辺の地域も開拓して、人を集めて勢力を作る。
そうやって、鬱陶しい連中に対抗する。
(忙しくなるな)
人を集めるだけでは終わらない。
集めた人を支えるだけの基盤も必要になる。
それをこれから作っていかねばならない。
考えるだけでも気が重くなる。
(でも、それは明日からだ)
さすがに今すぐどうにか出来るというわけではない。
全てはこれからである。




