137回目 むかつくような事をやらかす奴にやり返す事が出来るように
そんなトモルの実家への帰省は、夏休みが半分を過ぎた辺りにようやく実施された。
もともと親には、
「学校でもう少し学んでおきたいので」
というのを理由にして帰省が遅れるのを伝えている。
学校側にも口裏を合わさせてるので、親に疑われる心配もない。
実際にはダンジョンを破壊して冒険者を吸収して手下にしていたのだが。
そんな事を正直に話すわけにもいかない。
いずれ全てを明らかにする日が来るだろうが、それまでは暫く事実を秘匿しておく事にする。
(せめて、自分の兵隊を確実に保有できるまでは……)
そうなれば親を切り離して行動出来る。
そのための目安の一つとして、トモルはそう考えていた。
それまでは、まだ親などの下にいるしかない。
自分の食い扶持を稼げないならば、自立独立など出来るわけもないのだから。
もっとも、単に自分が食っていくだけなら何の問題もない。
モンスターを倒して核を手に入れる事など簡単にやってのける事が出来る。
それだけでも、一般人の収入を大きく上回る成果をあげられるだろう。
だが、今のトモルはそれ以上の欲望を抱いていた。
(どうせ出来るんなら、やれる所までやってみたいしなあ)
他をはるかに超越する能力をもっている。
その事がトモルに様々な可能性を抱かせていった。
何をどこまでやるのかはまだはっきりと確定していない。
だが、他の多くの者達よりもやれる事は大きいというのは分かってる。
だったら、色々挑戦してみたくもなる。
(あいつらの言いなりにはなりたくないし)
頭に浮かんでくるのは、偉そうにしていた様々な連中の姿である。
子供の頃はタケジ。
少し成長して、森園スミレ。
更に学校では寄宿舎の上級生。
そして、藤園カオリ。
いずれも鬱陶しい連中であった。
腕力やら権勢などを背景にして、好き勝手をしてくれてた輩である。
こういった者達は、この社会にもっと多く存在してるだろう。
用いる力も相当なものである。
こんな連中の意のままに動くような事にだけはなりたくなかった。
それが真っ当な内容であるならば、従うのもやぶさかではない。
時に自分を押し殺す必要だってあるだろう。
それが分からないほどトモルも愚かではない。
しかし、タケジから始まり、カオリに至るまでに遭遇した連中はこれに当てはまらなかった。
こいつらは本当に自分の好き勝手にやっていた。
そんな連中に従う必要性や義務があるとはとても思えなかった。
(我が儘になんか付き合ってられん)
トモルが決して妥協できない部分だった。
家の格や権勢などを否定したいとは思わない。
それが仕事をする上で必要な事もあるだろう。
だが、タケジにしろスミレにしろ上級生達にしろカオリにしろ、そんな素振りは一切見られなかった。
トモルが腹を立てたのはこのためである。
自分の欲求だけのために馬鹿げた事をやらかしていた。
それが許せなかった。
(だったら、徹底的にやるしかないよな……)
無理無体を押しつけてきたのだ。
同じように無理無体を返してやるのが筋というものである。
やられたからと無視をしていても、相手は図に乗るだけだ。
やらかす輩は徹底的に叩きのめし、叩き潰し、再起不能にしなくてはならない。
それも、没落や失墜、排除などという手ぬるい所で止めたりしてはいけない。
完全な消滅に至るまで徹底的にやらねばならない。
でなければ、いつか復活してまた悪さをする。
そうさせない為にも、完全に存在を抹消しなくてはならなかった。
少なくともこの世からは。
(最低でも、それが出来るくらいまでは強くならないと)
自分のレベルや能力だけではない。
集団や組織といった勢力を含めた強さである。
いくらトモルが強いといっても、個人で動ける範囲には限界がある。
それを補うためにも、手足のように働く集団が必要だった。
(上手くいけばいいけど)
レベルアップに比べて不確定要素が多いのが悩みである。
何せ人が絡んでくるのだ。
そうそう思い通りにはいかない。
幾らか動き出してはいるし、ささやかな成果も上がってはいる。
だが、まだまだ前途は多難。
これからもあれこれ考えて悩む日々は続きそうだった。
この話を書いてて感じたり思ったりした事
BOOTHにそんなものをまとめたものを置いている
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