135回目 手下に下す指示や命令
「そんなわけなんで、こっちの方にも何人か流れてくるとは思う」
「はあ……」
「もし来たら、受け入れてやってほしい」
「まあ、それは」
「戦力増強になるから、悪い話でもないだろ」
「それはそうですけどね」
「何か問題があるのか?」
「今のところは大丈夫かな?」
トモルの手下をまとめてる冒険者は、あれこれ考えながら返事をする。
「けど、人数によりますね。
いくらダンジョンとはいっても、大量に冒険者が入ったら取り合いになるんで」
そういった懸念もあった。
どうしてもつきまとう問題だ。
ダンジョンはかなり広く、中にモンスターが大量に出回ってる。
だが、大量の冒険者が中に入ったら、取り合いになる事もあり得た。
大量生まれてくるモンスターだが、一度に大量に倒してしまったら復活まで時間がかかる。
そうなると、モンスターの取り合いという、笑えない状態が発生してしまう。
「まあ、その時は奥まで進んでくれ。
それでどうにかしてもらいたい」
「そうするしかないですよね、やっぱり」
冒険者の方もそれは理解してる。
だが、そうなるとそれなりの手間がかかってしまう。
出来ればやりたくない方法ではあった。
とはいえ、逆らうわけにもいかない。
「じゃあ、出来るだけ頑張ってみます」
「頼んだぞ」
割と無責任に冒険者にダンジョンの事を任せていく。
今後流入してくるであろう他の冒険者の事も含めて。
丸投げもいいところだが、トモルはそうするしかない状況でもあった。
あと何カ所かのダンジョンを破壊しなくてはならない。
その間は冒険者達にある程度の仕事をさせねばならない。
もちろん全てを丸投げとはいかない。
やるべき事の指示は出しているし、戻ってきたら起こった事などの報告も受けている。
最低限やるべき事はトモルもしている。
それでも大部分は手下に任せねばならない状態だった。
もっと時間をかける事が出来ればいいのだが、現状でそれは望めない。
冒険者達に、手下には更なる努力と精進を求める事になってしまう。
その為、手下にはある程度成長の方向性を示していた。
指揮を執る者は指揮統率や運営の技術を身につけさせていった。
レベルアップの際に得られる振り分け可能技能点数を用いてだ。
これにより、今まで身につけてなかった技術であっても、即座に修得が出来る。
おかげで冒険者達は、たどたどしくはあるが、組織的な動きが出来るようになってきている。
試行錯誤を繰り返し、失敗と挫折を積み重ねながらではある。
それでも、だいぶ様になってきてもいた。
あとは経験を積み重ねていくだけである。
そんな彼等に学校近くのダンジョンを任せ、トモルは別のダンジョンの破壊に向かっていく。
まだまだ破壊しておきたい場所は幾つかある。
それらを根絶し、モンスターの脅威から人々を解放する……のは二の次三の次の目標である。
流出する人々を増やしてそれらをまとめてトモルの実家で確保する。
その為にも、まだまだ大量に失業者を発生させねばならなかった。
「それじゃ、今日も頑張ってきてくれ」
出発前に手下達に強化魔術をかけていく。
こうして彼等の戦闘力をあげておき、稼ぎを増やしていく。
死ぬ可能性も低下し、直接引率しなくても経験値を大量に稼いできてくれる。
ついでに荷馬車を引く馬にも強化魔術をかける。
運搬能力を上げるためだ。
効果時間を考えれば行きの片道しかもたないが。
それでも移動速度は上がるので、冒険者達にとってはありがたい。
最近はダンジョンの奥の方へと向かう事も多くなってるので、移動時間の短縮は助かるのだ。
そうしてくれるトモルに頭を下げて、手下になった冒険者達はダンジョンへと突入する。
そんな彼等を見送る事もなくトモルも駆け出す。
破壊しなくてはならないダンジョンに向かって。




