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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第4章

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133回目 力を見せるというのは必要な事であったようで

 ダンジョンから出ると、衛兵と冒険者達が待っていた。

 温和な顔をしてるものもいれば、険しい表情のものもいる。

 ただ、いずれもトモルを待っていたのは変わらない。

 出てきたトモルを見て声をかけようとする。



「おう、ちょっといいか」

「おいおい、そりゃあないだろ。

 まずはお疲れが先だろ」

「あー、それはともかくとしてだな」

 などなど口々にトモルに、あるいは隣の者に何かを言っていく。

 聞いてるトモルは何事だと思っているが、それらに付き合ってるほど暇でもない。



「用がないならどいてくれ。

 これから帰らなくちゃならないんだ」

 そう言って立ち去ろうとする。

 それを慌てて周りの者達が制止する。

「いや、待ってくれ。

 あんたに話があるんだ」

「ん?」

 仮面の下でトモルは顔をしかめる。

 それが相手に見える事はない。

 だが、雰囲気は伝わったようだ。



「まあ、そう警戒しないでくれ。

 そう難しい事じゃないから」

「ふーん」

 実際はどうなのか分からない。

 相手からすれば何という事は無いのかもしれないが。

 トモルからすれば面倒この上ないという事もある。

 ただ、話を聞かなければどうにもならない。

「聞くだけ聞かせてくれ」

 そう言って相手を促した。



「まあ、用っていっても簡単だ。

 もし良ければあんたの仲間にしてくれればってね」

「…………は?」

 予想外だった。

 まさか、出会ったその日にこんな事を言われるとは思わなかった。

 そう思ってるトモルに向けて、相手は言葉を続ける。



「あれだけいたモンスターを一気に蹴散らしたからな。

 そういう奴についていけば、死なないで済むだろう」

 実に簡単な理由である。

 だが、生き残る事を念頭にしているなら、これで充分でもあろう。

 強い奴の下につく、というのは理にかなってはいる。



「それに、ダンジョンをぶっこわしたのもあんたなんだろ。

 それが本当なら、そういう奴についていきたい。

 いい目が見られるだろうからな」

「そうでもないぞ」

 釘を刺すつもりで相手の考えを制していく。



「他の所に、一応手下もいる。

 けど、そいつらを守ったりしてるってわけでもない。

 暇な時に出向いて、そいつらを引っ張り回してるだけだ。

 俺が倒したモンスターの核はほとんど提供してやってるけど」

 せいぜいそのくらいだ、とトモルは正直に伝えた。

 トモルの下に入って得られる利益はこの程度だと。



「それでも来るのか?」

「もちろん」

 相手は間髪いれずに応えた。



「あんたについていけば、おこぼれに与れるんだろ。

 それだけでも最高だ」

 彼等からすればそういう事になる。



 危険な戦闘をする事もなく稼ぎを得る事が出来る。

 おこぼれを回収していくのはさすがに切ないものはある。

 だが、それも命の危険と引き替えなら安いものだ。

 意地や誇り、人としての尊厳は大事だが、それも生きていてのものだ。



 モンスター相手にそんなものを堅持しても意味がない。

 どんな汚い手を使ってでも勝って、そして核を手に入れねばならないのだから。

 楽にそれが出来るなら万々歳である。

「良かったら、あんたの下に入れてくれ」

 冒険者達はそう言って頼みこんでくる。

 そんな彼らにトモルは条件を伝える。



「俺には絶対服従だ。

 何があっても言われた通りにやれ。

 それが出来ないなら、お前らをモンスターの餌にする」

「ああ、分かった」

 これまた即答で冒険者達は頷いた。

「それで構わない」

 迷いのない声だった。

 それほどトモルの下にいたいという事なのだろう。



「だったら……」

 そんな彼等にトモルは最初の指示を出す。

「……別のダンジョンに向かえ。

 そこに俺の手下がいる。

 そいつらと合流しろ」

「分かった」

「旅費は全部そっち持ちだ。

 いいな」

「おう」

 冒険者達は本当にトモルの言う事に従っていく。



 言われてる事はかなり不利な内容であるのだが、それに反発する事は無い。

 その態度にトモルは少しだけ可能性を感じていく。

(少しは手元に残る奴も出てくるかな)

 今、こうしてトモルに従おうとしてる者達が、今後もずっと下に侍るとは思わない。

 だが、その中の何人かはずっと共にいる事になるかもしれない。



(多少は手下を確保出来ればいいけど)

 その可能性にトモルは賭ける事にした。

 ほんの少しでも、自分の手駒になる者が手に入る事に。

 おそらく上手くはいかないだろう。

 大半は逃げ出すか離反するだろう。

 反逆する者も出てくるかもしれない。



 しかし、それはそれで構わなかった。

 それが当たり前と思ってるので、どうという事は無い。

 それでも、ほんの少しでも誰かが残ればそれで良いのだ。

 その程度であっても、手元に誰かが残るならそれでいい。

 それならば損失にもならない。



 失敗したとしても何かを失ったとは言えない。

 もとより誰も残らないのが前提なのだ。

 結構気楽なものだった。



 それだけ伝えてトモルは町を離れていく。

 あとは冒険者達がどうするかを決めれば良い。

 言われた通りに指定されたダンジョンまで向かうのか。

 それとも気が変わって別の場所へと向かうのか。

 あるいは、何らかの理由でここに残るのか。

 それはもうトモルの関与するところではなかった。



(好きにすればいい)

 人間、誰しも自分の意志がある。

 それに従って決めれば良いだけである。

 そう思いながらトモルは、今日も町へと戻っていった。

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